この𝕏のポストで(ツイートでって書けば済んでいたのに一文字増えた)知ったけどIBMがEVについて何か言ってる。
きっかけ
「日本の消費者はEVを求めているのに、日系メーカーは既得権益に執心してそれに応えない」というお決まりのステレオタイプ。
— ebi kosuke (@ebi_kosuke) 2023年4月21日
IBM(日本法人じゃなくてグローバル)が調査したら、「メーカーはEVに積極的で消費者は消極的」と、真逆の結果が出たでござる。https://t.co/dE41Qg4PAY pic.twitter.com/pkhpExsq9a
なぜIBMが?という疑問は中を読めば解決する。PDFはこちら。
IBMはEVメーカー向けに商売しますよというホワイトペーパーだった。
ホワイトペーパーについての説明はこちら。
ホワイトペーパーは、もともとは政府や公的機関による年次報告書つまり「白書」を意味しました。しかし近年ではマーケティング用語としても用いられており、特定の技術や商品について売り込む目的で、調査と関連付けて利点や長所をアピールする記載がなされることが特徴です。
目次
- きっかけ
- 目次
- ポイント
- 今後3年以内に、EVの購入を考える消費者は50%に達する。
- 自動車業界のEVシフトは 今まさに転換点を迎えている、 しかし課題も残る
- EVの本格普及へ向けて 取り組むべき課題
- 日本市場に関する考察
- 感想まとめ
ポイント
まず1ページ目にポイントが書いてある。
今後3年以内に、EVの購入を考える消費者は50%に達する。
最初からツッコミどころが。P29(PDFだと31枚目)に該当箇所がある。
今回の調査では、日本の消費者が、グローバルの消費者に比べて電気自動車の購入意欲が低いことが分かっている。グローバル全体では50%の消費者が3年以内にEVの購入を検討していると回答したが、日本では9%と、調査した7カ国中最も興味が薄い結果となった。業界幹部によれば、今後3年間の日本でのEV関連投資の優先領域はマーケティングと販売(59%)となっており、日本では消費者への認知向上、商品の訴求が最優先と認識していることがうかがえる。
50%に達しないねえ。たった9%。「日本の消費者はEVを求めているのに、日系メーカーは既得権益に執心してそれに応えない」とは何だったのか。
日本向けのホワイトペーパーで「グローバルでは」とか言われても。このホワイトペーパーの著者はこのメンバー。
一番上の人がAuthorだとするとグローバルの人っぽいので仕方ないのかもしれないけど。
自動車業界のEVシフトは 今まさに転換点を迎えている、 しかし課題も残る
EVへの支出が61%の話はP5(PDFでは7枚目)にある。
さらに注目すべきは、今後数年のうちにEVへの投資額が内燃機関(ICE)車への投資額を上回るという予測だ(図1参照)。2030年までに、EVへの投資額は現在より61%増加し、内燃機関車への投資額は半分になると見込まれている。もっと驚くべきは、2041年以降に内燃機関車の販売を想定している幹部は皆無で、62%が2035年ごろまでに内燃機関車の販売はすべて終了するだろうと予測していることだ(図2参照)。
主語が無いから分からなかったけど、メーカーサイドの投資話だった。それは消費者側からすると割とどうでもいい話である。出てきたプロダクトで判断するしかないし。普通の人は「この車は開発費が掛かっている」とか言わないのよ、そういうことを言うシロートは存在するけど普通ではない。「この車は開発費が掛かっている」からなんだよって話。出てきたプロダクトで判断するしかないし大勢はそうする。金が掛かっていても出来が悪い車はいくらでもあって、判断ポイントにしたら見誤る。
では、販売シェア40%のほう。P12(PDFでは14枚目)
一方、EV充電インフラの整備には多大な労力が伴うため、業界幹部は当面の間は、これらの多様な充電手段が十分な水準に到達するとは考えていない。回答者の89%が、2040年までには自国のEV車向けの充電インフラが整備されると予測している。しかし、これは2030年に世界のEV販売台数シェアが40%になるという予測と相容れない。2030年までに、十分な充電設備が利用できるようになると予測する回答者は13%に過ぎないのだ(図7参照)。
この予想がどこから来たのかは書いていない。どういうこと?回答者誰?
サムネイル用Bing Image Creatorで生成。
EVの本格普及へ向けて 取り組むべき課題
ポイントの3つめは車内ITの話で、それってBEVだけじゃないだろって思うので飛ばす。P9(PDFの11枚目)の「EVの本格普及へ向けて 取り組むべき課題」を見てみる。
消費者の要望と業界幹部の認識の乖離自動車業界の幹部にとって、価格や機能面で消費者が何を求めているかを把握することが重要だ。そこで、双方のグループにEV購入の意思決定に関わる要因について質問したところ、明らかな相違があった。消費者が費用面を重視しているのに対し、業界幹部は充電の問題や環境に対する意識を消費者にとっての主な要因になると考えている(図3参照)。
これ、設問が悪いのか答えた業界幹部がバカなのか、判断に苦しむところである。発電量が足りなくて、送電網が送電量増加に耐えることができず、しかも電気料金が高止まりである。
しかも電気料金について言えば、ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰が原因なので日本だけの問題ではない。そこで起きたのがドイツなどのEVシフト鈍化である。
今年出したホワイトペーパーなのに(奥付にProduced in the United States of America | February 2023 とある)ウクライナ侵攻が反映されてない?業界幹部が気にしてない?おかしいだろ。自動車乗るならほとんどの人が燃費・電費を気にするだろ。燃費・電費を気にしない層が乗る車はブガッティとかだよ。タイムアタックしたら総額450万円とも言われるタイヤ全交換*1だよ。普通じゃない。
当然、普通車を作って売る業界幹部が燃費・電費を気にしないはずがない。燃費・電費性能を向上させるために技術開発してるじゃん。なんで回答が無いんだよ。
日本市場に関する考察
P29(PDFでは31枚目)から日本市場に関する考察がある。「2) 消費者のEVへの要望と企業とのギャップ」の文を引用する。
EVの購入動機について、グローバル全体でも消費者と業界幹部の認識のギャップが見られたが、日本ではさらに大きなギャップが見られた。業界幹部は、環境意識が消費者への一番のアピール・ポイントだと考えている(76%)が、消費者にとっては重要度が低い項目だ(27%)。消費者の関心事はコストと充電に集中し、商品の魅力ですら優先度が低い。業界が消費者認知を上げるためのマーケティング・メッセージを考える際に、消費者のマインドを再確認すべきだろう。EVの総所有コストとして、日本の消費者の55%は従来の車と比べて同程度以下を希望しており、業界幹部が想定する12%程度のコスト増とは乖離がある。また、自宅の充電設備設置費用については、日本の消費者の期待値は7万円程度と、グローバルの14万円程度(1ドル130円換算)と比べて厳しい。
え?
業界幹部は、環境意識が消費者への一番のアピール・ポイントだと考えている(76%)が、消費者にとっては重要度が低い項目だ(27%)。
こんな間抜けな業界幹部いるの?設問の問題?どう考えても自動車の購入にあたって気にするのは、利便性がライフスタイル・利用形態に合うかどうか、価格、ランニングコストだろ。みんながみんなスーツとかにSDG'sのバッジ付けて働いているわけじゃないぞ。
それに火力発電が主力の日本で、BEV売ったからって地球環境にいいわけじゃない。そんなことも分かってない業界幹部って存在する?
BEV売る時に環境意識がアピールポイントだと思っているなら、それで広告しろ、CM作れ。売れないからw
感想まとめ
Produced in the United States of America | February 2023って2023年2月だよね?ウクライナ侵攻2022年2月だよね?オレ間違ってないよね?なんか不安になってくるくらい出てくる情報が現状無視してて怖い。IBMのビジネスとしては現状認識がずれていても、サービスやプロダクトが売れればいいだけなんであまり関係ないのかもしれないけど。でも、ここまでずれていると「話にならない」とか言われかねないな。現場が大変な奴だ。でもこれを客先に持って行かなきゃいいだけかww
EVシフト、欧州もほぼ降りたし中国も頓挫しつつあるから、じきに日本も降りるんじゃね?無理して進めるほどのメリットも無いし、発電・送電も追いつかない。充電スタンドに至っては減ってる。
BEV売るならこれからはインドだよ。絶賛推進中。
*1:現行のシロンじゃなくて先代であるヴェイロンの時で