マーケットの状況を全く書かずにこういう記事書くって何かの縛り芸?
よく𝕏のポストで見掛ける「トヨタ死んだ」の見た目だけ格調高い版である。普通に論評しても元の中身が薄くて面白くないので、どういう構成なのかを分解してから料理する。掲載はこの号かな?
記事の整理
色々この記事に書かれたものを把握する。
章
では各章を見てみよう。最初「メディア礼讃~」の前にも章題なしで緒言が書かれている。PCで見ると4ページなのだが、各章はページまたがりする構成になっている。
あと、タイトルでは礼賛、章題では礼讃。表記揺れはオレのせいではなく記事が表記揺れしている。そういうところだぞ。
国・地域
自動車の場合、国や地域で大きく求められる商品性が異なる。どのような国や地域が出てくるか。明確に記載されている物だけをピックアップ。
- 中国
- 世界
- アメリカ
- 欧州
メーカー・メーカーグループ
- トヨタ・レクサス
- テスラ
- 日産
主な趣旨
章題「日本車メーカーが抱える問題」にあるこの部分である。
1つ目は今年開催されたジャパンモビリティショーであらわになっていることですが、トヨタをはじめとした日本車メーカーが出遅れているのはEVではなくSDVだという問題です。
SDV(Software Defined Vehicle)とは、自動車の価値がハードではなくソフトウェアで決まる車のことです。スマホ同様に新しいソフトウェアをダウンロードすることで性能が上がります。
設計面でEVと親和性が高いため、テスラでは2017年に発売のモデル3ですでにこのコンセプトが実装されているのですが、トヨタでは2026年発売予定のレクサスでようやくこのコンセプトに追い付く計画です。
新車が販売されているマーケットは
記事には面白いことに日本市場が出てこない。自動車は国や地域ごとに求められている商品性が大きく異なるので、旧来からの自動車メーカーグループは各地に対応している。トヨタみたいに全世界にトヨタブランドで展開している例もあるけど、セアトとかシュコダとかダチアとか五菱とかボクスホールとか、特定の国や地域のみに展開しているメーカー・ブランドもある。
「世界」でまとめんなよって思うけど、大雑把に見ても南米とか、インドとか、中国やインドを除く東南アジアとか、アフリカとか、中東とか、ロシア・旧ソ連各国とかでも新車販売はされている。インドはEV推しだけど、それ以外の地域は?
テスラのようにプロダクトアウトなら、持って行って「あ、売れませんね」でいいんだけど、マーケットインで販売しようと思ったら「あ、売れませんね」ってわけにはいかない。
別にマーケットインが善、プロダクトアウトが悪ってわけじゃなく、プロダクトを売る側がどのようにマーケットに対応するのかしないのかって話なんだけど。
高めの値付けの自動車を売っていきたいメーカーの場合、自分たちが作りたいものを作って売るプロダクトアウトで間違っていない。パガーニがマーケットリサーチをやった結果パガーニ・ウアイラを開発したわけじゃない。売れる台数に合わせて値付けするので少ない販売台数でもしっかり利益を出せる。たまに失敗するメーカーもあるけど。
一方いわゆる大衆車などの場合、買ってもらえる自動車にする必要がある。一台一台の値付けも低いし一台当たりの利益率も低い。コンパクトカーが欲しい地域にはコンパクトカーを持って行ったり現地開発したりする。何回も書いているけど、電力が不安定な地域や普及していない地域でEV売れるわけないだろ。
「これからの自動車はEV」というのはあくまで一部の国や地域に限られるんだわ。もちろん時間経過によって電力が安定したり普及して行けば話は変わるけど、インフラの場合そんなに短時間に状況が変わることはめったにない。
テスラはほぼプロダクトアウトでいいと思ってやってるし、ここ数年で全世界に普及なんてことも考えてないはず。あの程度のモデルの作り分けでいいんだという部分ではマーケットを見ているけど。多分モデル3以下の小さいモデルは出さないか、出すとしてもかなり時間が経ってからだろう。OEMで調達するという手も無くはないけど、それが薄そうなのはSDVの話である。
主:ソフトウェア 従:自動車のハードウェア という世界観の時代は来るか
来るけど来ない。ずるい書き方をしているわけじゃなく、商品性による。自動車は高い買い物である。SDVの説明部分の引用を再掲するけど、
SDV(Software Defined Vehicle)とは、自動車の価値がハードではなくソフトウェアで決まる車のことです。スマホ同様に新しいソフトウェアをダウンロードすることで性能が上がります。
ということなら親和性が高いのは低価格のAセグメント(小型車)Bセグメント(コンパクトカー)からEセグメント(プレミアム)やFセグメント(フラッグシップ)までのどのあたりだろうか。
機能としてのソフトウェアは、一部地域向けを除く全セグメントに乗ることになっていくだろう。でも主がソフトウェアになるって、いくつかの車種を比べて購入対象を決めるようなタイプの購入者に親和性が高い。見た目の評価やブランドへの許容度は大きく機能面と価格で比較する。ソフトウェアで決まるなら必要なサイズと機能と価格で決めるだろう。
カーリースには親和性が高いかも。カーリースの提供者が自動車メーカー、あるいはSDVのコントロールができる立場だとすると吊るしの状態でリースに出してあとはソフトウェア的に選択させればいい。
一方、例えば911買うような層とフェラーリ・ローマを買うような層はこの2台を購入時にソフトウェア優先でこの2車を比較するだろうか。明らかにハードウェアが主ではないだろうか。
テスラがOEM調達しないだろうという話を上で触れたけど、特定モデルだけテスラのソフトウェアじゃない商売をするか、あるいはOEM調達する車両でテスラのソフトウェアが動くようにするならそのメーカーに情報を公開する必要がある。
テスラがSDVソフトウェア界のマイクロソフトを狙うなら公開もありだけど、じゃあその時テスラのハードウェアは売れるの?って話になる。OSの世界に例えて言えばApple型で進めたいんじゃない?汎用的なソフトウェア作るのは結構大変だよ、過去を切り捨てしにくいし。
あともう一度再掲するけど、これ認識間違ってるよ。
SDV(Software Defined Vehicle)とは、自動車の価値がハードではなくソフトウェアで決まる車のことです。スマホ同様に新しいソフトウェアをダウンロードすることで性能が上がります。
どこのスマホが買ったあとにソフトウェアをダウンロードすると性能が上がるんだよ。見たことも聞いたことも無い。機能は増えるけどな、デバイスが対応している限りで。そんなことになってたら、誰もスマホを買い替えないだろうが。どんどん性能上がるんでしょ。
SDVの場合、例えばハードウェア的に300kW(約407ps)の自動車があるとして、標準購入だと100kWしか出力してくれないけどプラス100万円ごとに100kW上げるみたいな商売は可能である。でもプラス200万円払ってMAXの300kWまでは行くけどそれ以上は無理。物理的に無理。
これが商用車なら載せる荷物によっては標準でもいい使い方もあるし、重い荷物を載せるならプラス100万円、プラス200万円ということもあるだろう。
でも、乗用車でそれはどうか。こればっかりは分からない。昔はステッカーチューンなるものが流行った。ノンターボのグレードにTURBOって貼ったり、SOHCのグレードにTWINCAMって貼ったりする奴である。もちろんグレードのバッジも貼り変える。
あとメーカー側も分かっていて、ガチのSじゃないAudiにS iineとかみたいにSのバッジを貼っている奴もある。S4じゃなくA4のS lineである。価格差は結構あるけど、それよりも大きいのは性能差。でもそれっぽいエクステリアだけ欲しい人もいるのでこういう商売をしている。メルセデスもBMWもレクサスもやってる。
SDVの機能として性能向上した時、見た目には何も無し?バッジは後から?でもバッタモンのバッジがすぐ出回りそうじゃん。逆に全部外したりして外観はすごく高性能グレードっぽいのに何も情報を出さないって人もいるわけで、自動車という高額の買い物について人間の心理がどっち側にいくほうが多いのかはオレには分からない。
深刻なのか?
記事読む前に実はこのツリーを見てしまった。見てしまったので違うことを書いた。深刻なのかの部分は引用する。
長いので先頭とキモになるところだけ。
東洋経済によるトヨタ批判記事が話題らしいので、記事にツッコミながら、私なりのトヨタの現状評価と課題をご説明したいと思います。
— ウミガメ@自動車の未来予測 (@turtle_auto) 2023年11月4日
①衰退した他業界との重ね合わせ
記事中で、好決算から突如崩れ落ちたフィルムや家電業界を例に、トヨタが慢心してEVやSDVで負けると分析。https://t.co/BSSCXtZf4W
痛い目にあったトヨタはここで
— ウミガメ@自動車の未来予測 (@turtle_auto) 2023年11月5日
①EVに今すぐ全振りする
②EVは一旦敵から学び、数年は耐える
という二つの道で後者を選びました。
この判断が今回の好決算に繋がりました。
中国はEVで覇権を取るかに見えましたが、本国の景気が低迷、米国も規制や補助金で煽動するも国民がEVを思ったより買いません。
政治や産業構造、様々な要因が絡み合いながら、リスクを避けたトヨタは一次大戦後半戦からは伸び伸びとハイブリッド車で利益を伸ばし、逆にEVに全振りした旧来メークは痛手を負いました。
— ウミガメ@自動車の未来予測 (@turtle_auto) 2023年11月5日
来年中頃くらいで一次大戦は終わりますが、名を上げたのはテスラやBYD、ヒョンデなどの企業です。
トヨタは戦わずして体力を温存し、利益過去最高、販売台数過去最高を達成。数年前までこれらの数字を争っていたVWは、判断を誤り見る影もなくなりました。
— ウミガメ@自動車の未来予測 (@turtle_auto) 2023年11月5日
この複雑さがわかりますか?国が絡む産業と、その他の産業を安易に比較するのは愚の骨頂です。
続いてのツッコミは
②SDVでの出遅れ
です。
オレもここには完全に同意する。EV支持派がことごとく比較や例えを間違うってどういうことだよ。
この複雑さがわかりますか?国が絡む産業と、その他の産業を安易に比較するのは愚の骨頂です。
おまけ
付いてたリプライが秀逸。
鈴木貴博氏の評価。まあ元クイズ王のコンサルタントだからね。 pic.twitter.com/simxRrqq8m
— yamatoji2023 (@yamatoji) 2023年11月5日
なるほど。
サムネイル用。Bing Image Creatorで生成。