テスラ保険だと?
読んでみると翻訳記事でUSでのことのようだ。
簡単に要約すると、テスラは既存の保険会社に嫌がられているけど(理由は後述)、テスラが自前で保険を準備しているよって記事。どうやらこのサイトも翻訳元のサイトもテスラ推しのようなのでそこは割り引いて考える必要がある。タイトル通り「自動車保険市場をも破壊する革命的なテスラ保険」かどうか、ちょっと調べてみたい。
タイトルの件、結論から言えば「日本にはすぐには来ない」である。
USにおける自動車保険参入障壁
まずUSの損害保険会社への参入障壁について調べてみたい。
3年前だが興味深い記事が早速見つかった。
米GM(ゼネラル・モータース)が11月18日、自社の自動車保険会社となるオンスター・インシュランス・サービスを開業し、25日に実際の保険業務に乗り出すことを発表した。自動車メーカーが提供する独自の保険としてはテスラに次いで2番目。テスラが壊した自動車を頂点とするビジネスモデルは崩壊し、今後自動車メーカーが保険業に参入する流れが鮮明になる可能性もある。
トヨタ自動車は、あいおいニッセイ同和損害保険の筆頭株主ではあるが、今後トヨタ本体が自動車保険に参入する動きも加速してくるかもしれない。
あいおいニッセイ同和損保はMS&ADのADのほうね。三井住友海上がADを合併しないのは、トヨタに気を使っているからかもしれない。かつての住友銀行とかつての住友海上火災保険は別会社だけど同じ住友系、こういう話もあるし。
2004年の最高裁判決以降なにしてたんですか?って聞かれたら耐えられるのかしら。ココまでの大見得は切らない方が良かったと思うよ。トヨタが潰れそうになったときに住銀支店長が暴言吐いてその後50年近く出入り禁止になったことを思い出す。企業は社会課題に対して旗幟を鮮明にしすぎない方が。 https://t.co/9h0ZxIcmkh
— たいしょう (@taisho__) 2023年9月11日
> トヨタが潰れそうになったときに住銀支店長が暴言吐いてその後50年近く出入り禁止になった
— 遊撃部長F/S&RWAs (@fstora) 2023年9月12日
安心して下さい、SMBCになった今でも旧住銀の人間は出入り禁止です(を
これ東海地方だと有名な話
— なんヴぁ@C102 8/13(日)東2W19b (@Namba_NIT) 2023年9月12日
戦後直後、トヨタが倒産の危機に陥ったときに住友に泣きついたら『機屋(豊田自動織機)に貸す金はあるが、鍛冶屋(トヨタ)に貸す金はない』と突っ返されたのが事の発端
トヨタはブチギレて住友系と絶交(続 https://t.co/wZ1IZ1HVVF
このエコノミストの記事だが、資金力さえあればあっさり損害保険事業に参入できそうである。なお、金融庁のサイトにある三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ(平成23年)の資料によれば、主要国の保険制度では、下記のように記載されている。
米国では、マッカラン・ファーガソン法(連邦法)により、保険業の監督は州ごとにそれぞれの州の保険法(insurance law)に基づいて行なわれることになっている。ニューヨーク州においても、州の保険法(New York Insurance Law、以下ISCという)により保険監督が行われており、業務範囲は保険法によって規定されている。
州を越えて走る車が存在する以上、色々ありそうだけどそこも調べてみた。
世界最大の保険市場、米国。損害保険会社の数は、日本の約50に対し、3000以上も存在する。米国といえば、訴訟大国ともいわれ、自動車事故が起これば「すぐに訴訟」というイメージもあるが、実は年間の平均保険料が高額なことが影響してか、無保険者も多いという。また、米国では日本の自賠責保険のような国の制度がなく、州ごとに保険の内容が異なるというから驚きだ。乗用車の保有率でも世界一をいく米国の、自動車保険事情とは?
まず、米国の自動車保険の最大の特徴は、前述のとおり日本の自賠責保険のような国の制度がなく、州ごとに最低限度の対人・対物賠償責任保険を購入するよう自動車所有者に法律で義務付けている点。つまり、州によって補償内容や補償額に差があり、保険料も大きく異なっているということだ。
うわー、ハイウェイ走って東から西へ、西から東へなんてやってたらヤベー事になるな、保険料。州境付近の居住者とか企業とかどうなんだろう。
こういう情報を集めてみると、地域保険会社の自動車保険に加入するより、テスラやGMなどが提供する自動車保険に加入する方がリーズナブルかもしれない。
ちなみに現在の日本では、地域保険会社は沖縄の大同火災のみである。
記事からUSでのテスラ保険の状況を探る
元記事から引用。
テスラは2019年、一部の顧客からのテスラ車の自動車保険料がかなり高くなっているというフィードバックに基づき、保険市場に参入しました。私自身のテスラ車の自動車保険は、今年初めにリバティミューチュアル社から1,000ドル値上げされましたが、私自身の違反もなく事故もなく、その理由についての正当な説明もありませんでした。残念ながら、テスラの保険はニューヨークではまだ提供されていません。
金融庁のサイトにある三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ(平成23年)の「主要国の保険制度に関する調査」では、USはなぜかニューヨーク州しか調べていない。あといくつかの州は欲しいところである。でも、ちょうどいいので引用しよう。
米国では、マッカラン・ファーガソン法(連邦法)により、保険業の監督は州ごとにそれぞれの州の保険法(insurance law)に基づいて行なわれることになっている。ニューヨーク州においても、州の保険法(New York Insurance Law、以下ISCという)により保険監督が行われており、業務範囲は保険法によって規定されている。
(中略)
(b) 損害保険会社
損害保険会社が営むことのできる業務も生命保険会社と同様に保険法によって明記されており、業務範囲はこれに従っている。 具体的には、同法において「損害保険会社は、1種目または2種目以上の基本保険種目3を引き受けるために設立され、免許を受けることが出来る」と規定されている(ISC 4102条(a))。基本保険種目は以下のとおりである。
1) 基本保険種目
- 火災保険(ISC 1113条(a)(4))
- 盗難保険(ISC 1113条(a)(7))
- (中略)
また、上記の基本保険種目を引き受けるために設立され免許を受けた損害保険会社は、一定の要件を満たすことで非基本保険種目を引き受ける免許を受けることが可能となっている(ISC 4102条(b))。非基本保険種目は次のとおりである。
(中略)
- 自動車車両保険及び航空機機体保険(ISC 1113条(a)(19))
(以下略)
うわ、めんどくせーニューヨーク州。基本の方に自動車保険が無く非基本保険種目だし、自動車車両保険及び航空機機体保険という括りになっている。航空機の方はやりませんはありなのかどうかはニューヨーク州ISC1113条(a)(19)を読めってことになりそうだけど、本筋ではないので割愛。ニューヨーク州がまだ対象外なのは面倒だからというのは分かった。
記事での順番は逆だがどんな保険かを引用。
テスラ独自のソフトウェアで取得・算出されたドライバーの「セーフティスコア」(安全スコア)に基づいて、同社は顧客にリスクレベルを割り当てることができ、同社がリスクが低いと判断したドライバーには低料金を提供することができます。このセーフティスコアは、車間距離、アグレッシブな旋回、急ブレーキ、シートベルトの着用、運転速度、オートパイロットの強制解除などの運転行動をシステムで判断して、0~100点の間で決定されます。このドライバーのセーフティスコアが高ければ高いほど、保険料が安くなる仕組みです。
日本の自動車保険も自由化以降ほとんどがリスク細分型だし、この頃はドライブレコーダーなどIT機器を活用した保険も出てきている。でも基本的に後付けである。テスラの場合は標準で入っているソフトウェアでスコア計算するので、保険料にスコアを適用しやすい。
テスラ車の修理が高いわけ
記事から引用する。
従来の損害保険会社は、テスラの修理代は他の自動車ブランドよりも高くつく傾向があるという言い訳をします。そして、これは事実です。テスラの車にはアルミニウムとアルミニウム/スチール合金の両方が使用されているため(軽量化のため)、自動車修理工場がテスラ車の修理方法を習得するのに時間がかかっています。また、テスラ公認のショップが少ないことも、価格競争につながっていない状況です。
(中略)
最近のリペアパル社のデータによると、テスラの年間平均修理・メンテナンス費用は、平均的な車のそれよりも少し高い(835ドル対652ドル)。しかし、この28%高い平均修理費は、テスラ車の実際の保険料上昇を正当化するものではありません。
なんか違うと思う。メガキャスト(アルミダイカストでEVの車体全体を一体成形する技術)だからじゃね?他の車が鈑金塗装やパネル交換で済むような修理でも、一体成形じゃそうはいかないし。修理方法の習得に時間が掛かるっていうのはそうだろう。
あと、平均修理費が高い車の保険料が上がるのは正当化される話。こういうところにテスラ推しの影響が見える。
じゃあ日本にも来る?テスラ保険
多分まだ日本のテスラ乗りは保険で困ってない。ライバル車と比較する方がいいだろう。
モデル3とBMW i4がライバルという記事である。料率クラスを見てみよう。このサイトなら料率クラスをすぐに調べられる。料率クラスの数字が大きいと保険料が高くなる。
テスラ・モデル3はこんな感じ。
BMW i4、記事に出てくるM50の価格見たらモデル3の1.8倍じゃねーか。バカかAuto Bild Japan(アウトビルドジャパン)。ということで価格がモデル3と同じくらいの型式で調べる。
車両保険はi4の方が高い。
トミカにも初回版とかあるんだな。まああるか。トミカにテスラ無さそう。
別の車も比較。サイズ的にはリーフもライバルか。リーフの方が安いけど、そこは国産車と輸入車の違いということで。
リーフの料率クラスはこんな感じ。
車両保険は安いけど、対人・対物高いな。やはり今まで走っているからそれなりに事故もありそう。これトータルするとあまり変わらないって感じかな。
ということを見ていくと日本の場合、テスラの保険が高いからテスラは買わないって話にはならないというのが分かる。この数字を見るとテスラ自ら保険を売るって考えるほどの料率クラスではない。
まずUSで頑張れ
ニューヨーク州が対象外っていう話は上で引用したが、そもそもまだまだだった。「自動車保険市場をも破壊する革命的なテスラ保険」はUSにおいても言い過ぎだった。いわんや日本においてをやである。
テスラの自動車保険は現在米国の12の州でのみ利用可能です。 テスラは今後時間をかけてさらに多くの州に拡大する予定ですが、対象地域外の私たちはまだ従来の保険会社に加入せざるを得ません。テスラ保険は現在、以下の州で利用可能です(2023年9月現在)
ユタ馬鹿にできないな。