厚生労働省が職域接種だと言っているのに、マスコミは職場接種と言ったり表記したりしているケースがある。
政府は企業や大学での新型コロナウイルスワクチンの職場接種に関し、22日午後5時時点で累計3725会場の申請を受け付けたと発表した。
政府は職場接種とは言ってないだろ。
最初は職域ではなく職場に矮小化しようという印象操作かと思っていたのだが、もしかすると職域という言葉に本当になじみが無い記者がいるのではと思った。
なお、辞書の「職域」は次の通りで職域接種の意味は分からない。受け持ち範囲の接種って意味ではないだろう。なお写真は新明解国語辞典第二版。古いw
Webの辞書でも似たような記述である。これはサムネイルで全部読める。一応職場という文字も入ってはいる。
では厚生労働省の言う職域とは何か。実はこれは辞書にも載ってないし、言葉の定義したものも検索上位でヒットしない。しかも、職域保健という言葉が出てくるのにこれも定義されておらず、職域保険しか意味が分からない。
しかし検索上位では地域に対して職域という”域”を設定しているように見える。J-Stageは論文サイトなので除外した。
で、オレは保険会社担当期間が長かったし、職域関連で大きな案件を受注したので厚生労働省が言うところの職域の意味を知っている。
「職域保険とは」はあるんだよな。
会社員・公務員・船員とその扶養家族を対象とする社会保険。健康保険(組合健保・協会けんぽ)・厚生年金・労災保険・雇用保険・共済組合・船員保険など。被用者保険。→地域保険
職域保険でも地域と職域は対をなす概念であり、辞書の職域(各職業の範囲、職業に従事している場所)とは異なる。保険と保健で対象は異なるが”域”の定義は似たようなものである。
上に引用した日経などのように、職域(指す範囲が大きい)であって職場(指す範囲が小さい)ではないというニュアンスをマスコミが正しく理解していないのは、厚生労働省のアナウンスも良くないのではないか。なにせ厚生労働省のサイト内を探しても「職域保健とは」「職域保健における職域とは」なんて見当たらないんだから。PDF全部開いていけば見つかるかもしれないけど。
もちろん、職域接種の対象となる大企業や学校の担当者は職域という単語の意味を解っている場合のほうが多いはずなので職域接種の展開上の問題はないのだが、せっかくのスピードアップ施策も不公平だのなんだの足を引っ張る向きもあるので、ここはひとつ厚生労働行政における「職域とは」をしっかり書いておくべきではないか。
今回の職域接種なんてまさに検索上位に出てくる地域・職域連携推進事業である。地域で順番が回ってこなくても職域で受けられる人もいるし、職域接種に回る人がいれば残りの人は地域接種の順番が早く回ってくる。これを不公平とかなんとか不満をいうのは明らかに物の道理が分かっていなさすぎである。複数の手段でワクチン接種の網を掛けてスピードアップしようという施策だし。
一方トヨタは"職域"というものがよくわかっているという事例。「まずは社員様」からじゃないところがすばらしい。
「21日から始まった、新型コロナワクチンの職域接種。トヨタ自動車では21日、不特定多数との接触がある清掃員や食堂の従業員など、約300人が本社の体育館でワクチンを接種する予定です」
— 大森 恒彦 (@kwRFkCoR4RuEVs0) 2021年6月22日
すばらしい!
さすがトヨタ!
がんばれトヨタ!https://t.co/jVwqUf9ery
こちらは辞書通りの職域。