香川県のネット・ゲーム規制条例案、可決されてしまった。個人の自己決定権などに対する不当な干渉であり、憲法13条に違反じゃねえの?
ネット・ゲーム依存症対策条例」は全国初のゲーム依存症に特化した条例として、4月1日に施行する見通し。
同条例は、18歳未満の子どものネット・ゲーム依存症を防ぐため、県や保護者、通信事業者、ゲーム制作会社などの責務を明記したもの。罰則はないものの、「ゲームは平日1日60分まで」「午後10時以降はゲーム禁止」など具体的な制限が記されており、条例案の発表当初からネット上で物議を醸していた。
こんな声も出ている。
結局このまま可決されてしまったか………
— 佐藤大哲-だいてつ@IT屋さん (@SatoDaitetsu) 2020年3月18日
弊社は特定電気通信役務提供者に該当するのだけど、香川のためだけに工数は割けない(確実に赤)のでサービス提供エリアから除外する方向で検討します。 pic.twitter.com/NUO6c2Pyqt
しかも、対策したらしたでこれまでの利用者からも訴訟される可能性もある。香川県だけイベント制限とかどう考えてもコスト的に無理。家庭は努力義務という条例だけど、事業者にとっては刑事罰がないというだけの話なのでサービスを提供しない方向に行くしかない。
ということで該当部分を見てみよう。
https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/web/upfiles/wr2f3g200122132241_f02.pdf
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)ネット・ゲーム依存症 ネット・ゲームにのめり込むことにより、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。
(2)ネット・ゲーム インターネット及びコンピュータゲームをいう。
(3)オンラインゲーム インターネットなどの通信ネットワークを介して行われるコンピュータゲーム
(4)子ども 18 歳未満の者をいう。
(5)学校等 学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和 22 年法律第1 6 4号)第 39 条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成 18 年法律第 77 号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。
(6)スマートフォン等 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)することができるスマートフォン、パソコン等及びコンピュータゲームをいう。
(7)保護者 親権を行う者若しくは未成年後見人又はこれらに準ずる者をいう。
:とか使ってくれればいいのに、スペースなんで区切りが分かりにくい。
(事業者の役割)
第 11 条 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民のネット・ゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力するものとする。
2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる等子どもの福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的な規制に努めること等により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
3 特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成 13 年法律第 137 号)第2条第3号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。)及び端末設備の販売又は貸付けを業とする者は、その事業活動を行うに当たって、フィルタリングソフトウェアの活用その他適切な方法により、県民がネット・ゲーム
依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
ここで特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の第2条を見てみる。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。(損害賠償責任の制限)
わかりにくいので総務省の解説を見てみる。
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
-解説-
3 第3号 特定電気通信役務提供者
(1) 趣旨
本号は、本法律の規定の対象となる者を定めたものである。特定電気通信設備を用いて電気通信役務を提供する者を「特定電気通信役務提供者」としている。
プロバイダは、自らが設置している特定電気通信設備を用いた特定電気通信によって他人の権利を侵害する情報が流通している場合に、(a)当該情報の送信を防止するための措置をとる、(b)発信者の特定に資する情報(発信者情報)を開示する、という対応をとることが可能な場合があるため、本法律では、このようなプロバイダを対象とし、特定電気通信による情報の流通によって権利が侵害された場合について、(i)適切かつ迅速な対応を促進するための損害賠償責任の制限、(ii)権利の侵害を受けた者が当該情報の発信者情報の開示を受けることができるための権利を規定することとしている。
企業・大学等は、特定電気通信設備を設置して、企業の従業員、大学の職員・学生に外部の者との通信のために当該設備を使用させている場合がある。このような場合、企業・大学等は、プロバイダと同様の役務を営利を目的とせずに提供しているものと考えられ、上記(a)、(b)の対応をとることのできる者という意味では、プロバイダと何ら異なるものではない。そこで、本法律においては、役務を提供する者を営利目的で限定することとはせず、企業・大学等を含めた特定電気通信設備を用いて電気通信役務を提供しているすべての者を対象者とすることとしている。
具体的には、ウェブホスティング等を行ったり、第三者が自由に書き込みのできる電子掲示板を運用したりしている者であれば、電気通信事業法の規律の対象となる電気通信事業者だけでなく、例えば、企業、大学、地方公共団体や、電子掲示板を管理する個人等も特定電気通信役務提供者に該当しうるものである。
(2) 用語の説明
① 「他人の通信を媒介し」
「他人の通信を媒介する」とは、他人の依頼を受けて、情報(符号、音響又は影像)をその内容を変更することなく、伝送・交換し、隔地者間の通信を取り次ぎ、又は仲介してそれを完成させることをいう。
② 「特定電気通信設備を他人の通信の用に供する」
「特定電気通信設備を他人の通信の用に供する」とは、特定電気通信設備を他人の通信のために運用することをいい、特定電気通信設備を直接他人に利用させることはもとより、「他人の通信を媒介する」ことも含む。また、「他人の通信」には、自己と他人との通信を含むことから、自己の特定電気通信設備を自己以外の者との通信に使用することは、通信相手たる他人の通信の用にその設備を供していることとなる。
なお、コンテンツ・プロバイダなどの場合であっても、ウェブサーバ等の特定電気通信設備を用いてサービスを提供しているのであれば、特定電気通信設備を他人の通信の用に供していることとなるので、その場合は、特定電気通信役務提供者に該当するが、そのほとんどの場合は自らの情報を発信しているのであり、「発信者」に該当するものと考えられる。
ブログもコメント欄が開いていれば特定電気通信役務提供者じゃん。それはともかく引用が長くなったので条例の第11条を再掲する。
(事業者の役割)
第 11 条 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民のネット・ゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力するものとする。
2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる等子どもの福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的な規制に努めること等により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
3 特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成 13 年法律第 137 号)第2条第3号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。)及び端末設備の販売又は貸付けを業とする者は、その事業活動を行うに当たって、フィルタリングソフトウェアの活用その他適切な方法により、県民がネット・ゲーム
依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。
これ、香川県のために対策しろって書いてあるけど、必要な対策って何?フィルタリングしていいなら、そもそもネットワークを繋がなければ済む話。インターネットから香川県を切り離せばいいじゃん。手っ取り早い。閉域網であればネット・ゲーム依存症になるようなコンテンツもゲームも無いし。
「著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等」みたいに内容云々の前に、ネットワーク越しに香川在住で、かつ年齢は18歳未満かなどをきちんと特定する方法を組み込む必要が出てくる。
もし対応するとして通信の秘密に引っ掛からない方法を考えてみる。単純に言えば香川県の18歳未満を見つける。普通にサービスを提供していて「あ、香川の18歳未満だから60分で終了ね」とかやるのは難しい、というか中身見るならできなくもないけど、通信の秘密の侵害という憲法第21条第2項違反になっちゃうから。
まず香川県かどうか。スマホ等の携帯キャリアネットワークからのアクセスで、香川県かどうかを判断できない(はず:仕組上)なので、位置情報ONを必須にするかな。OFFなら使用させない。
ネットワークがキャリアやプロバイダ経由ならIPアドレスから香川県かどうかを判別できる。
年齢確認、オレならめんどくさいからクレジットカード必須にしちゃう。無料のゲーム等だとしてもクレジットカードのオーソリを組み込んでしまえば、親の同意があっても18歳未満や18歳以上でも高校生はクレジットカードを作れないので弾くことができる。
Google PlayカードとかiTunesカードとかは支払いのみOKにする。
この方法だと、対象年齢が子供もOKのゲームは子供が入れなくて辛すぎる。親にアカウント作らせるぐらいしかない。親が契約者でプレイヤーはその子供っていうのは、システム修正必要だねえ。
クレジットカードでもめんどくさいってなると、どうやって年齢を確実に把握するか。マイナンバーカードを必須にすればいいんだけど。赤ちゃんから作れるマイナンバーカードだけど、わざわざ取得するかねえ。
ということで、考えてみると内容云々の前に香川県の18歳未満じゃない確認なんてやってられないと思う。携帯キャリアは香川県で18歳未満へのサービスを終了、キャリア・プロバイダもインターネットへの接続サービスは18歳未満が入り込まない企業等のみにするとか、インターネットと香川県の18歳未満を切断するのが一番リーズナブル。
条例をもとになにか対応を求められた企業は、第19条を盾に費用負担を申し入れてはどうだろう。
(財政上の措置)
第 19 条 県は、ネット・ゲーム依存症対策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努める。
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ご参考。