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近鉄の車掌の件、鉄道営業法第三十八条違反の乗客こそ処罰されるべき事案である

近畿日本鉄道(以下、近鉄)の車掌が飛び降りた件、報道されあれこれ反響がある。

少し長いが引用する。

21日午前11時ごろ、東大阪市近鉄奈良線東花園駅のホームで乗客に対応していた26歳の男性車掌が制服の上着や帽子を脱ぎ捨てて線路に降り、さらに、およそ7メートルある高架下に飛び降りました。
近鉄によりますと、車掌は病院に搬送されましたが腰や胸の骨を折る重傷だということです。目撃者の話などによりますと、車掌は別の駅で起きた人身事故の影響で電車が運転を見合わせたため、ホームで運転再開の見通しなどを乗客に説明していたところ、突然「もう嫌だ」などと叫んで線路に降りていったということです。近鉄が詳しい状況を調べています。
近鉄は「車掌が不適切な行動を起こしたことは大変遺憾です。本人から詳細な状況を確認したい」とコメントしています。

当該車掌の行動が適切ではなかったことは分かるが、そこに至るまでの問題、近鉄の反応についての問題について考えてみたい。

近鉄のWebサイトには、本件についてのニュースリリース・お知らせは一切掲示されていない。

  近畿日本鉄道 

  近畿日本鉄道(archive.isによる魚拓)

 

近鉄奈良線鉄道事業法における第1種鉄道事業と考えられる。鉄道事業法では下記のように規定されている。

(輸送の安全性の向上)
第十八条の二  鉄道事業者は、輸送の安全の確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性の向上に努めなければならない。

つまり、安全が何よりも優先される許認可事業ということである。事故で停車している際に乗客の要求に応じて列車を動かす等は、安全の確保を怠ることであり鉄道事業法第十八条の二に違反することになる。

 

また鉄道営業法では、下記のように規定されている。

  鉄道営業法

 第三十八条  暴行脅迫ヲ以テ鉄道係員ノ職務ノ執行ヲ妨害シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス

 今回の事案、近鉄の当該車掌がこのような行動を取った原因は、この第三十八条に該当する暴行脅迫行為があった可能性が否めない。

そしてこの「鉄道係員」についても鉄道営業法で規定されている。

   第二章 鉄道係員

 

第十九条  鉄道係員ノ職制ハ国土交通省令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条  鉄道事業者ハ鉄道係員ノ服務規程ヲ定ムベシ
第二十一条  国土交通大臣ハ鉄道係員タルニ要スル資格ヲ定ムルコトヲ得
第二十二条  旅客及公衆ニ対スル職務ヲ行フ鉄道係員ハ一定ノ制服ヲ著スヘシ
第二十三条  削除
第二十四条  鉄道係員職務取扱中旅客若ハ公衆ニ対シ失行アリタルトキハ三十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第二十五条  鉄道係員職務上ノ義務ニ違背シ又ハ職務ヲ怠リ旅客若ハ公衆ニ危害ヲ醸スノ虞アル所為アリタルトキハ三月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十六条  鉄道係員旅客ヲ強ヒテ定員ヲ超エ車中ニ乗込マシメタルトキハ三十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第二十七条  削除
第二十八条  鉄道係員道路踏切ノ開通ヲ怠リ又ハ故ナク車両其ノ他ノ器具ヲ踏切ニ留置シ因テ往来ヲ妨害シタルトキハ三十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス

ニュースによれば、「26歳の男性車掌が制服の上着や帽子を脱ぎ捨て」とあるので、第二十二条の「旅客及公衆ニ対スル職務ヲ行フ鉄道係員ハ一定ノ制服ヲ著スヘシ」という状態から、鉄道係員ではない状態に移行したかったのかもしれない。定められた執務時間内なので制服を脱いだからといっても鉄道係員ではない状態に遷移できないわけだが。

当該車掌は、第二十四条、第二十五条違反ではあるのだが。第二十五条に該当するとしても鉄道営業法的には「三月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金」であり、同第三十八条の「一年以下ノ懲役ニ処ス」よりも罰としては軽い。同一の法律においてこのような刑罰の軽重がある場合、より重い刑罰が規定されている事項のほうがより重い犯罪として規定されている考えるのが一般的であろう。

 

言い換えると、職務放棄をした車掌は第二十四条あるいは第二十五条によって処罰されるべきではあるが、そこに至る原因となった乗客については、第三十八条違反として処罰されうる対象ということになる。これについては、ホーム等に設置されているビデオカメラ等の映像によって追跡調査されるべきと考える。鉄道事業法第十八条の二に規定される、輸送の安全、他の乗客の安全を確保するためにも。

 

そもそもの運転見合わせは他駅における人身事故だったとされる。当該車掌に詰め寄ったところで、警察の調査完了を待たなければ運行できない。詰め寄っていた乗客たちは、一体何をしたかったのだろうか。

すぐに動くのか、すぐには回復しないのかという確認までは、当該車掌も受け付け説明すべきである。しかし、運行再開の決定権を持たない車掌にそれ以上の内容で詰め寄ったところで、何も事態は変わらない。会社、学校、訪問先などへ遅刻の連絡をするほうが乗客にとっては優先されるべき事項であろう。幸い、今は鉄道の乗客となるような人たちはほぼ一人一台以上の携帯電話を携行しているはずである。昔のように公衆電話が連絡のボトルネックとなることはない。問題発生時は駅構内に停車中であったようなので、車内で電話を掛けるというマナー違反ではなく、駅ホームにて電話をすることも可能である。

 

車掌に詰め寄った乗客たちが、単にフラストレーションを解消したかったということであれば、それは車掌が受けるべき質問を大きく逸脱している。まさに鉄道営業法第三十八条違反である。

 

鉄道事業法第十八の二に規定するように、「輸送の安全」を第一にするのであれば、航空会社が客室乗務員という名の保安要員の指示に従わない乗客を排除する(有体に言えば飛行機から降ろす)ように、このような乗客たちを強制的に排除すべきと考える。そのためには警察を呼んで対応してもらうべき状況も想定される。一定のラインまでは通常対応、一定のラインを超えたらモンスターカスタマー、クレーマー扱いとして排除に動くよう、各鉄道会社においては規定すべきであろう。

 

いくつかリンクを貼って締めたい。まずはスカイ・マークのサービス・コンセプト。

 

高木美保氏の発言、実家に帰ってきていてチャンネル選択権が無いので、たまたまリアルで見ていた。アホか?アホなのか?

 

まったく同意。クレーマーがやっていることは、クレーマー以外の乗客から輸送の安全や、事故からの速やかな回復、的確なアナウンス等の搾取に等しい。

 

これも同意。当該車掌は職務放棄の処分や処罰を受けるべきではあるが、このような事態を再発させないようにするためには、原因となった乗客こそが処罰の対象と考える。

 

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