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DeNA WELQの記事非公開化は早かったのか遅かったのか

昨日、社長名のお詫び文とともに、WELQの記事が非公開になった。

専門家による監修のないまま、根拠が不明確な医療関連記事を載せていたことについて、数多くのご批判をいただきました。細心の注意を払って取り扱うべき医療情報をこのように不適切な形で提供していたことは大きな間違いであったと反省し、11月29日にWELQの全記事を非公開化しました。
加えて、WELQも含めたキュレーションメディアの記事制作のプロセスに問題があるというご指摘もございました。さらに、当社に対する責任所在の考え方についてのご指摘も頂戴しました。

 

これらのご批判を真摯に受け止め、改めて弊社の運用の実態がどういうものであったかを調査しました。その結果、共通する運営体制・方針の9つのメディア(WELQiemoFind TravelcutaUpInCAFYJOOYGOINPUUL)に関して、マニュアルやライターの方々への指示などにおいて、他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点がございました。この点について、私自身、モラルに反していないという考えを持つことができませんでした。

 

このまま記事を提供し続けることは許されないと判断し、本日18時に、9メディアの記事を全て非公開化することを決定致しました。

記事の非公開化は11月30日18時ということになる。 

 筒香はいい選手である。

 

ネット上では「早い対応」という声もあるが、コーポレートレピュテーション的には「遅かったな」というのが素直な感想。オレのTwitterのTL上では11月24日に「WELQ」という文字が増え始め、問題点はTL上に流れる文字列だけでも把握できた。特にこのツイート。

 「ヘルスケア」を名乗るサイトに守護霊とかみたいな単語が出てくるなんて、冗談としても笑えない。もちろん不適切なのですぐに記事を削除すべき事案である。

コーポレート・レピュテーション

コーポレート・レピュテーション

 

  

本エントリではコーポレートレピュテーションに特化して論じたい。そういうわけで、経緯や問題点やDeNA側の動きなどは各々詳しい記事があるので、そのリンクを貼っておく。コーポレートレピュテーションの話題へ。各リンクを参照したい方はそのまま読み続けて頂きたい。

 

これまでの経緯・問題点。DeNA側の動きなど

WELQ問題に火を付けた感がある永江一石氏のブログは下記。最初は11月24日の記事。

続編はブログカードではなくリンクで。今回リンク多いので。

【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回) | More Access! More Fun!

東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾) | More Access! More Fun!

パクリWebスパムのウェルク(welq)はどのようにして誕生したのか(シリーズ第4回) | More Access! More Fun!

著作権侵害を犯罪と思わないみなさんが震え上がるビジネスモデルのご提案 | More Access! More Fun!

 

BuzzFeedでは最初の記事が10月28日。順を追っていくと、SEOに特化してクラウドソーシングを使って大量に記事を生産。DeNA側の指定したマニュアル通りに執筆すれば、パクってもコピペじゃないもんで通るレベルの文章が出来上がるという仕組み。

健康や医療をもっと身近に”をコンセプトとしたこのメディアは、規約に同意して会員になれば、誰でも記事を掲載できる。

検索結果の最上位に表示された記事には、著者のおすすめ市販薬と、咳が止まらない時の対処法などが書かれている。

著者のプロフィールには「美容・健康に目のない私。お役立ち情報をお届けします」とある。医療の専門家ではなく、なにかを調べて記事にまとめたようだが、その情報の出所は明かされていない。

サイト内にあるほかの記事には、水素水を「がんを始めさまざまな病気を予防する水」としたり、ブラックシードを「死以外のあらゆる病を癒す薬」として紹介したりするものもあった。

 水素水www。続報は下記。

医療情報サイトなのに「不倫」「略奪愛」? DeNA運営メディアWELQの信頼性は

DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言

DeNAが「WELQ」全記事を非公開に 不正確な医療情報に相次いだ批判「深くお詫び」

DeNA、WELQに続き8メディアを非公開に MERYのみ継続、理由は?

 

社長のインタビューはTechCranch。12月1日付け。

「あとから監修」は認識が甘かった

–今回の一連の騒動について、どうお考えですか?

守安氏: WELQに端を発した一連の騒動に関しまして、多くの方々にご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げたいと思っています。

私自身、今回の騒動の問題点は2つあると考えています。1つめが医療・ヘルスケア情報の取り扱いに関して認識が甘かった点です。数カ月前から(WELQについて)医療関係者の監修がない状態で記事が公開されている事実を把握していました。当時、「後で監修をつければいいのではないか」と思っていたのですが、この認識が甘かったと思っています。医療・ヘルスケアというセンシティブな情報を取り扱うメディアとして、あるべき姿ではなかったな、と。監修をつけるプロセスは進めていましたが、もっと早い段階で取り入れるべきだったと思います。

2つめはWELQに限らず、私たちが運営するその他のキュレーションメディアも含まれることなのですが、記事の作り方に問題があったと思っています。BuzzFeed( Japan)が公開した記事を見まして、マニュアルや指示の内容、例示の仕方など記事を作る一連のプロセスがクリーンであったか、モラル的に問題がなかったかと考えると、決してそうではない。記事の作り方に問題があると感じました。 

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に | TechCrunch Japan

 

なお、記事のプラットフォームとなっているDeNAパレットだが、現在アクセスできない模様。DNSから消したようだ。

  http://dena-palette.jp/

 

DeNAのレピュテーションマネジメントについて

さて、DeNAのコーポレートレピュテーションについて。10月末にBuzzFeedが問題提起した時点ではそんなに騒ぎになっていない。

問題が広まりはじめたのは11月24日くらいから。WELQの場合は、SEOでアクセスさせるサイト。WELQご指名でアクセスされるサイトではないので、Googleトレンドで”WELQ”が増え始めた11月24日くらいに問題の認識が広がり始めたと考える。

リンク集を飛ばした人用に時系列をもう一度まとめる。

  1. 10月28日にBuzzFeedで第一報
  2. 11月17日にBuzzFeedで第二報
  3. 11月24日に@tsuj氏のツイート
  4. 11月28日に永江氏のブログでこの問題の第一報
  5. 11月30日18時に記事非公開化
  6. 12月1日にDeNAの社長名お詫び文やTechCranchのインタビュー記事

11月24日(木)に、誰が起点は分からないが、@tsuji氏のようにWELQの問題記事をチェックし始めた人が増えたり、それをリツイートしたりし始めた人が増えたりしたと思われる。DeNAが遺伝子検査をやっていることもあり、WELQのような不適切な医療・健康サイトとの関係性も騒がれ始めた。

 元々、DeNAが遺伝子検査をしていたのは知っていたが、たまたまポスティングされてた。遺伝子検査については個人遺伝情報取扱協議会広告・宣伝に関するガイドライン(PDF)を出している。

1. 景品表示法における不当表示に関する規定等、商品の表示に関する法令を遵守していること。
2. 事業者が提供する検査・商品等に関する広告は、その内容によっては消費者に誤解を招き、誤って活用される危険性もあることから、医師法薬事法健康増進法食品衛生法等関連する法令等を遵守していること。
3. 事業者が体質遺伝子検査の広告を行う際には、事実に相違する、あるいは消費者を誤解させるような広告等を行わないよう関連する法令を遵守していること。
4. 当該事業に関する表示・広告等において、医療行為と誤認・類推される表記を用いないようにしていること。
5. DTC 遺伝子検査単独では診断目的では用いることができないことがインフォームド・コンセントの説明文章等に明記されていること。

 さまざまな分野に手を出しているDeNAとしては、片方で普通に遺伝子検査の事業をやっていてその事業体が出す広告・宣伝が適切であったとしても、WELQのようなサイトを運営しているだけで問題となりうる。WELQの内容だとWELQに「遺伝子検査」という文字列があったら一発アウトと言ってもいい。

 

オレのツイートが11月26日土曜日。Googleトレンドでは11月26日(土)は11月25日(金)よりも下がっているが、11月27日(日)は増加基調に復帰している。この状態をDeNA側が認識していないはずはなく、レピュテーションマネジメント的には11月28日(月)には何かアクションを起こすべきだった。この時点での一番手っ取り早い手は、速報ベースのお詫び文とWELQの非公開化だろう。

 

WELQの問題には複数の問題点があるが、医療や健康について不適切な情報という第一の問題と、(a)クラウドソーシングで安く(b)パクり指南をして大量生産したドキュメントを(c)SEOで上位にランクさせる第二の問題に大別できる。第二の問題はWELQ以外の分野のキュレーションメディアにも共通で、検索すると上位にパクりやゴミが来るという結果を招く。

 

今回の9メディア記事非公開化は、第二の問題についてもトップダウンで判断した結果だろう。12月1日に対策する内容としては適切。でも、

 レピュテーションマネジメントとしてはすでに失敗である。11月24日のうちに手を打てるような迅速な企業はほぼ無いと思うが、土日を挟んで月曜日に対策できないのは遅い。DeNAは「上場しているけどベンチャー」を標ぼうしているらしいが、それなら土日に対策していればベストだった。まずWELQだけ始末して、他のキュレーションメディアは同時記事非公開化せずに、守安社長の言う「あとから監修」で逃げ切れた可能性がある。9メディア全部だと、相当各方面にインパクトが大きそう。株価とか業績とか他の事業とか。

不格好経営―チームDeNAの挑戦
 

 

オレとしては、ちょっと遅くて大出血したけど適切な方向性の対応・対策だと思う。でも、WELQの第一の問題は非公開化で一度収まるが、第二の問題は今後DeNAが同様のメディアを持とうとしたときに、ビジネスとして成功が難しいレベルの致命傷。そのレピュテーションについては、どうやって回復するんだろう。忘れてもらえるまで待つのか、DeNAの名前を隠すのか。名前隠しでバレて騒がれたら、今度はDeNA自体に傷が大きくつく。DeNAの名前を隠さずに堂々とやるつもりなら、DeNAとしては儲からないけどプロに執筆を依頼するなど、ゴミ量産・SEOで上位を狙う巨大アフィリエイター形態とは決別し、その決別を目に見える形でアピールする必要があるだろう。

 

あと、レピュテーションマネジメントに関係ないオレの素直な感想はこちら。

 

オレ的にはLINE株式会社よりはかなり印象がいい。でもLINE民はアレなので(以下24文字自粛)。このあと上場する詐欺を繰り返した後、上場したのはすごい。やっぱりLINE民はアレなので(以下24文字自粛)。

PCデポなんてレピュテーションリスクを軽視し過ぎて株価が下がり、業績もゆるやかに死に向かいつつある。

一方で企業規模が小さければ、しばらく死んだふりをすれば忘れてもらえる。

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