渋谷駅で非常停止ボタンが押された件。撮影された動画の前後でいうと、多分これがわかりやすい。
実は、この動画が撮影される前には、ある行為が繰り返されていた。財布を落とした乗客は、線路内をのぞき込んだり、線路内に降りようとしていたというのだ。
駅員は、危ないと判断し、ホーム上の安全な場所に男性を移動させた。
昔も似たようなエントリを書いたことがある。
まず、鉄道事業法を見てみる。
(輸送の安全性の向上)第十八条の二 鉄道事業者は、輸送の安全の確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性の向上に努めなければならない。
輸送の安全の確保が最も重要である。山手線のような過密ダイヤで、線路に降りようとする人間に強く注意するのは当然である。
今回の事例は鉄道営業法にピッタリのものが無かった。もし動画の前に暴言があったとすれば第38条だろう。いや、非常停止ボタンを押しただけでも該当するかもしれない。
第三十八条 暴行脅迫ヲ以テ鉄道係員ノ職務ノ執行ヲ妨害シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス
今回の事例は判断が難しいところがあるので、非常停止ボタンについて、国土交通省の鉄道の安全利用に関する手引きを見てみる。
(2)列車非常停止装置(非常停止押しボタン)
○プラットホームから線路内に転落した人を見たときなど、急いで列車を停止させる必要があるときは、一部の駅では列車非常停止装置があるので、ためらわずに使用しましょう。または、近くの駅係員などに急いで知らせましょう。
○列車非常停止装置を押しても、線路に降りてはいけません。
→ 列車はすぐに停止することができないので、列車と接触するなどの事故につながるおそれがあります。
(注)列車速度が高く、かつ、運転本数の多いプラットホームを有する駅については、列車非常停止装置等の設置を進めています。
○列車非常停止装置は急いで列車を停止させる必要があるときに使うものなので、駅係員に連絡したいときなどは、連絡装置(インターホン)を使用しましょう。
○いたずらなど非常の場合以外には、使用してはいけません。
→安全確認のため、列車が遅れ、周りの多くの人にも迷惑をかけるなどのおそれがあります。いたずらなどで使用すると法律により罰せられる場合があります。
ということなので、まず財布を落としたとされる人は、「線路内をのぞき込んだり、線路内に降りようとして」はいけない。まずは駅員さんに連絡すべきだった。
そして財布を落としただけなら、転落した人の人身事故やもっと大きく重いものが落ちていて列車に損傷が出る重大事故ではない。つまり非常時ではないので非常停止ボタンを押すレベルの状況ではない。
動画の範囲だと駅員さんの言葉が強いのでそれを批判する向きもあるようだが、国鉄時代ならともかく、民営化から35年も経ったJRの職員が、最初からあのような言葉づかいというのはかなり違和感を覚える。
こういう話もある。ヤフコメなので真偽はわからないが。
JRの財布男の件、気になってヤフーニュースのコメ欄見てたら前後の目撃者らしき方のコメ載ってて非常に納得。
— 結城信輝 (@nobuteruyuuki) 2022年7月6日
思いっきり煽って→撮影という、まさに迷惑系〜だった。 pic.twitter.com/lWrlIu5QBh
ヤフコメの真偽はともかく、「お願いしてる方と駅員さんのテンションが違いすぎる」事に違和感でしたし、そもそも「やりとりを撮影してる」事にも違和感があったので気になったんですよ。
— 結城信輝 (@nobuteruyuuki) 2022年7月6日
その個人的な疑問に納得できる答えだったのが(自称)目撃者の方のコメだったっていう、それだけですね。
こういう話だとすれば納得感はある。
渋谷駅ホームに怒声「山手線止めた」財布落として非常停止ボタンに駅員激怒
それが、動画が撮影された場所、ベンチの側。ここで駅員ともみあいとなり、警察に連絡したという。
駅員:「とりあえず交番行くからな 待っとけ」
乗客:「何で交番行くんすか」
駅員:「何でだよ よく考えてみろ電車止まってんだよ」
乗客:「取ってくれないからじゃないですか」
駅員:「そういう態度なんとかせえや」
乗客:「何で僕交番いかないといけないんですか」
該当するのは鉄道営業法なのか威力業務妨害なのかはわからないが、輸送の安全の確保を第一に求められている駅員としては警察に届けるというのは当然だろう。
ということで、オレの意見としては「渋谷駅の駅員は法令遵守しただけである」となる。