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てきとーに生きている奴の日記

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業務改善と情シス

興味深いツイートを見掛けた。ほぼ同意。

 

 

SIerの中の人としてちょっと書きたい。実際問題、このツイートにあるように情報システム部門の立場は弱い。

shigeo-t.hatenablog.com

 多分、日本企業の情報システム部門の人は、上の手順でパッケージ適用できるとは言わないだろう。全く手順が違うから。

  1. A業務の現場に現在の業務内容・手順をヒアリング
  2. A業務用のパッケージ候補を持ってきそうなベンダにRFI(Request For Information )で投げる
  3. RFIに応えて上がってきたパッケージの中で候補選定(パッケージ費用、ベンダとの親密度)
  4. RFP(Request For Proposal)をベンダに出してコンペの上、ベンダ選定(提案してきた総費用、スケジュール、ベンダとの親密度などで決定)
  5. 受注ベンダが開発プロジェクトを開始
  6. 発注企業の要件定義はRFPに書いてある程度のものしかないので、もう一度要件定義ということでA業務の現場に現在の業務内容・手順をヒアリング
  7. 現場はあまり現状と変えたくない(便利にはなって欲しいのに)ので、WhatをヒアリングしてもHow山盛りで要件がまとめられる
  8. 同じ発注側企業内でさえ(一般的には)情報システム部門よりも現場のほうが発言力を持っているので、発注企業─受託企業ではさらに力の差がある。そのため、仕様のコントロールが効かず、受注ベンダは費用が折り合わないので再提案しようとプロジェクトをロールバック
  9. 再提案はパッケージ適用じゃなくスクラッチ開発への変更(場合によっては再RFP→コンペに)

 

あ、完全にパッケージ適用で始めたはずのプロジェクトがいつの間にかスクラッチになってしまう例を書いてしまった。パッケージ適用のままとしても、

 (A)プロジェクトそのものがストップ/無期延期

 (B)費用感を見直して発注側が費用負担できるので発注額増で続行

 (C)とにかくカスタマイズ・アドオン仕様を削るサブプロジェクト発足

ということでまあ大変。これじゃあ、情報システム部門発案でパッケージ適用なんて話にはならない。関係者の寿命が縮む。

 

情報システム部門の立場が弱いのはいくつか理由があるが、多くの場合コストセンターという位置づけだからである。しかも人事、総務、経理などのように敵に回すとやっかいでプロフィットセンターの仕事が回らなくなるならともかく、情報システムがきちんと動かなくて経営陣に怒られるのは情報システム部門。ケンカしても両成敗にさえならない。CIOとか実質いない企業も多いし、いてもITわかってなかったりして味方にならない。CIOいても経営陣の一角でさえない場合もある。キング・オブ・コストセンター(ただし最弱)。

 

となると情報システム部門主導で業務改革などできるわけがない。予算も引っ張れないし、プロフィットセンターに言うことを聞かせることもできない。SIerが業務改善を提案しないのも当然。提案しても情報システム部門に遂行力が無い。ただの無駄。

 

オレの場合も現在は合併で消滅した損保会社を担当していた時、上司の命令で情報システム部門とは関係なく本社各部門と直接やりとりしていた。これがおもしろい。

shigeo-t.hatenablog.com

 11倍の話は、最初は1億でSFAの案件。セールスフォース・ドットコムが日本に上陸していたらこの受注は無かった。セールスフォース・ドットコムの日本法人ができる前の受注である。

 

次はかなり時間を掛けたけど11億円。次の案件の提案を始めた時は、顧客側から細かい話が出る前にコンセプトをまとめ、表紙含めて5枚になったので、詳細は書かずに5億で提示。

経営企画部門をつかんで話を進め、何度目かの打合せ終わりにエレベータホールまで送ってくれた経営企画部長と並んで歩いている時に、「片手か?」と聞かれたので一瞬「片手半」と答えそうになるが、キリのいい「両手です」と回答。いや片手半でもきちんと利益は出る計算だったのだが。これで予算枠確保。

 

ではなんでプラス1億円かというと、これは先輩SEと担当営業の手柄?。

この案件に後から加わった先輩SEがすごい心配性の人なのだが、一日が27時間くらいの人でどんどん活動時間がずれて朝来れない日が続くとか、そのせいで家の電話が鳴るのが怖いので電話機は冷蔵庫内に入れてあるとか、クレジットカードを持つのがとにかく怖いので絶対に持たないとか色んな逸話のある人。なんと10億の案件で10億円のシステム構成を組んでしまった。そういやこの先輩の前案件はやっぱりすごい台数のサーバが顧客データセンタに地蔵のように並ぶ案件で(つまり小さめのサーバがたくさん)、マシンパワーが余りまくりだった。心配だからという理由だったのは笑ったけど。

 

オレの姓に濁点を付けた名前の担当営業に、「オレが見なおすからお客さんに話すな」と言うと、すでにちょろっとしゃべってしまったらしい。濁点の話は例えば中田が「なかた」だったり「なかだ」だったりするような感じ。我々の場合は漢字も違うけど。

それでなんでかわからないけどプラス1億。実際にこの案件を統括した上司が困ってた。利益出過ぎて。システム開発の場合、粗利で5割弱とか想定されていないので、内規的に問題があり、あれこれ同顧客内の別案件のコストも負担することでごまかしていた。

情報システム部門とキリキリお金やスケジュールの話をしているのと違って、業務改善にポンっと予算が付く。こちらも面白いのでしっかり業務改善の提案ができる。

 

業務改善はトップダウンでやらなければ成功しないので、ボトムアップで考えた案など面白くもなんともない。「できる範囲ならこうです」で業務改善できるなら誰も苦労しない。ToBeモデルはどうあるべきかどうなるべきかを演繹的に出す必要がある。

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そういう意味では元ツイにあるSIerのコンサルって、そんなに成功率は高くないと思う。コンサルティング会社よりも安いから受注率は高いかもしれないけど。元々情報システム部門と一緒に帰納的に考えてた人たちが、急に演繹的に仕事を進められるはずもない。実際そういう場面に出くわしたりもした。

360倍の話。その時点で10数年前に色々問題があってほとんど取引が無くなっていた企業。担当の営業部長が課長時代から通い詰めて少しずつ入り始めていた。

 

最初はシステムの利用状況に応じて賦課をしたいということで、コンサルティング案件。上司に言われてコンサルティング研修をUSで受けた後輩を送り込んだのだが、うまく交渉できないと弱音を吐くので、結局オレが仕切ったけど。アメリカなんか行ってないんですけど、オレ。選抜の文書をたまたま上司の机の上で見た時、「成績優秀者」という選定条件があり、「あ~オレ成績優秀者じゃないんだ~」と思った記憶がww

 

まあそれはともかく、取りにいった大きな案件は、今までPC側メインで動いていたあるシステムをWebシステムに大更改するというもので、当然他のベンダーの牙城。最終的にはクリスマス頃に呼び出されていきなり提案書を60分で説明しろと。正味108ページあって我々は煩悩の数と呼んでた。途中で質問が入らないという話でオレが説明したのだが、一か所だけポロっと質問が入ったので63分で説明完了。冬場の乾燥した室内で60分話続けるのは結構喉に来る。本番はここから。2時間半の大質問タイム。RFPに無いこともバンバン聞いてくる。RFPに無いことは当然提案書にも無いわけだが、きっちり検討していたのでほぼ想定範囲内。ガンガン回答しまくってほぼミスなし(自己評価)。クリスマス過ぎに受注が決まった。18億円。

 

結論から言えば、事業会社は「SIerが業務改善を提案しない」って文句を言う前に、トップダウンで業務改善するという姿勢を経営者が見せるほうが先だと思うよ。

 

マンガで読まないとわからない層が担当するような話じゃないと思うし、新米プロマネに担当させる話でもないと思うんだ、業務改善。

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