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てきとーに生きている奴の日記

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日本では徴兵制が実現できないたった一つの理由

タイトルは釣りです(挨拶)。いっぱい理由はあるんだけど、厳選しました!ww

 

時事ネタはあまり書かないんだけど、別に禁じているわけではないので軽く書いておく。

 

今回も集団的自衛権の話題に伴って出てきた徴兵制の話題。たとえば下記。

徴兵制を導入した方がよいかもしれない - 森永卓郎

日本の若者に戦争への危機感がないのは、「自分は関係がない」と思っているからだろう。だから、私はいっそのこと若者たちに徴兵制を適用したらどうかと思う。そうすれば、戦争の恐ろしさを、自分自身のこととして、考えるようになるだろう。もちろん若者だけではなく、国会議員にも任期を終えたら戦地に赴く義務を課し、国家公務員は人事異動で前線に配属できるようにすべきだ。そうすれば、安倍内閣がこれだけの暴走をすることに危機を感じるようになるだろう。

本当に(この手の人たちは)徴兵制大好きなんだな。もちろん引用元エントリもその筆者も「逆説的に徴兵制導入」というレトリックを使っているのはわかるけど、それにしても徴兵制大好きじゃなきゃ、あるいは理想とする国家体制的に徴兵制を念頭に置いていなきゃこれだけ徴兵制が毎度毎度話題になるのはおかしい。

そもそも徴兵制・軍事組織に「教育」を求めることから間違ってる。そりゃ組織維持・軍事活動に必要な教育はするだろうけど、生涯を過ごすうえで必要となるあらゆる教育をする場ではない。大体において森永卓郎獨協大学教授が、大学や他の教育機関を差し置いて自衛隊に教育機能を求めるのは教育の敗北だろ。

それにどこに使うんだよ。基本的に現代の戦争で(一応現時点で)他国と地続きの国土を持たない日本において、白兵戦や大規模派兵をする状況は(a)すごく攻め込まれて本土決戦、(b)他国を侵略しか無いわけだが。(b)については現在の日本は他国を侵略して得られるメリットよりもデメリットのほうが大きい。やる理由が無い。(a)の事態はもう、徴兵制がどうのって言ってる状況ではない。

集団的自衛権によって他国を侵略するだろ って思っている人がいるかもしれないが、語義としても国際社会の中の日本ということでいっても「集団的自衛権」という名のもとに他国を侵略するなど不可能。クリミア問題を見ても分かるように、侵攻じゃなく併合要求&承認でさえ問題になってるのに。たまたま「集団的に」他国領土を一時統治という事態はゼロではないが、それって今でもPKIとかでやってることの延長線上の話。徴兵は必要ではない。

 

猫式敬礼の写真を入れとくw。

f:id:shigeo-t:20140516085044j:plain

 

ではタイトルの説明。税収が足りません。長らく税収が足りなくてプライマリーバランスが話題になっているし国債発行総額も大きい。で、国債発行額は下記。

日本の国債発行額推移

日本の国債発行額推移

国債発行額推移】

年度 国債発行額
2014年(予) 181兆円
2013年 170兆円
2012年 174兆円
2011年 169兆円
2010年 162兆円
2009年 132兆円

で、徴兵するという事は一時的にせよ徴兵期間は国家公務員。徴兵されれば国家公務員試験を受けなくっても国家公務員ですよ。脱線しそうになった。そういう話じゃなかった。話題を戻す。国家公務員ということは国庫から給与を支払うわけ。

防衛省・自衛隊:防衛省・自衛隊の人員構成

(2013.3.31 現在)
(出典 防衛白書(平成25年版)) 

区分 陸上自衛隊 海上自衛隊 航空自衛隊 統合幕僚監部 合計(※)
定員 151,063 45,517 47,097 3,495 247,172
現員 136,573 42,007 42,733 3,213 224,526
充足率(%) 90.4 92.3 90.7 91.9 90.8

充足率が90%台前半なのは予算不足の側面もある。細かい点は(PDF注意)我が国の防衛と予算 - 防衛省 などに詳しい。ここは定員25万人弱という数字だけ頭に入れておいて欲しい。

 

徴兵期間は国庫から給与を貰うってこと(給与から一部を納税するとはいえ)で、納税者としての労働者として見た時、徴兵は他の産業に従事して納税する労働者が減ることを意味する。また、他の産業から労働者を奪って国家公務員としているということは、他の産業の規模の縮小を意味する可能性もある。

くどい言い回しになったが上記を言い換えると、国庫からの支出を伴わない納税者が減るし、企業としての納税額の減少も伴う可能性があるということになる。今話題の「労働者が集まらない」企業(すき家とかワタミとか)などは徴兵でさらに要員確保が困難となり、要員不足による事業規模縮小が確実ということなるだろう。しかも普通の場合、徴兵期間と飲食業などのアルバイトの年齢層は合致する。

 

何歳から何年間を徴兵期間にするのかは分からないけど、教育コストを考えると1年未満で入れ替わりというのはありえない。ガンガン入れ替えると事務コストもかさむし。まあ仮に20歳から3年間としてみよう。一般に大学入学18歳、卒業22歳だから難しいんだけど。統計局ホームページ/人口推計/人口推計(平成25年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐に統計情報があるので調べると、人口推計(平成25年10月1日現在)では20歳が男女計1,221[千人]、19歳が1,241[千人]、18歳が1,229[千人]。雇用機会均等法遵守で男女平等だとすると、20歳で徴兵対象となって、適格条件から外れる人が約10%いるとして、3年間徴兵が続いた時点で3,322[千人]が徴兵されていることになる。3百万人超ww。なにこの合宿式合コン・婚活ww。(安いながらも)給料貰って合宿式合コンかあ、雇用対策兼少子化対策にはなるかもなw。

 

ちなみに自衛官モデル給与例(PDF:65KB)を見ると、士長20歳独身で年俸約300万円。森永卓郎氏が生き抜けるという書を出してた300万円。徴兵するとここらの一部(30%)が納税されて戻ってくることを考えても、200万円は国庫からの支出。上の3,322[千人]なので、行って来いで6,644[G円]。昔ギガ円(=10億円)単位で話したら上司にいやな顔をされたので、きちんと直すと税収込みで約6兆6,440億円の支出。人件費の予算としては、約9兆9,660億円。日本の国家予算の約10%www(参考例:来年度予算案、過去最大95.9兆円:朝日新聞デジタル)。

 

もちろんなにも装備を支給せず施設を使わせずに裸で置いておくわけじゃないので、上記仮定には計上していない設備・装備、その他コスト分が必要。人員増するとそれだけ給与支給額以外の費用も増えるんだけどね。ここまで頭が廻らないという事は「徴兵制がー」のやつら、さては原価厨だなw(原価厨の発言が鼻で笑われる理由を図解する)。

多分、上で計算した給与支給額の倍以上は掛かる。一般企業でさえ社会保険の負担分だとか福利厚生だとか各員ごとに掛かる費用、共通で掛かる設備・その他コストを合算していくと若年層の場合は給与支給額の倍以上かかるんだから、軍としての設備・装備、その他を考えると軽く二桁兆円コース。

 

ということを考えると、今よりも多額の国債発行を前提としないと徴兵の初年度の予算さえ組めない。次年度はさらに人員増ということになるとさらに予算が組めない。そういうわけで、予算編成的には実現不可能。

 

まあ、そもそも3百万人どこに使うのよ っていう問題はあるんだけどね。

まあ、今時これから徴兵制を実施できる国って、もともとの給与ベースが低い上に失業率が高く反体制派も徴兵もどきをやってて、(あ)給与は踏み倒す気満々、(い)国家体制が不安定なので払えなくなることは気にしてない とかそんな感じ。逆にこれまで長らく徴兵制だった国はやめる方向の国が多い(一応条約的に終戦してない隣の上下国はまだやめないわけだが)。

 

ということで、すぐに徴兵制が頭に浮かぶ人たちって、徴兵制がある国の人なんじゃないのという感想を持ちつつこの項おしまい。小学生の算数・社会を履修済なら理解できる程度の話。以上。

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 書いておくけど、オレは国家予算や国家財政には詳しくないよ。費用積上げてみたら粗く積んでも桁的に無理だねって話。

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