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てきとーに生きている奴の日記

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東京2020は打ち水で涼しく開催できるのか? ─今から間に合う夏休みの自由研究2018

 例年は「今から間に合う夏休みの自由研究」でギリギリの時期に一日あればサクっとできる内容をお届けしているが、今年は全国の多くの小学5年生・6年生に同じテーマで自由研究をやってもらいたいので、早めに出すことにした。

今回の題材は打ち水である。

「風呂の残り湯などを使って朝夕にまく打ち水は、江戸の知恵で、おもてなしでもある。隣近所で、同じような時間にやることで涼を確保する。この作戦も、東京大会で威力を発揮するのではないか」

(中略)

イベント前の同所の路面温度は39・2度だったが、打ち水を行った後は35度で、4・2度下がった。

 

第一に下げたいのは路面温度ではない。そりゃ打ち水直後の路面温度は下がるでしょうよ。体感の熱さをどれだけ下げられるかである。

 

第二に江戸時代に、他の地方は別として水不足・薪不足の江戸で風呂の残り湯などが発生する余地は少ない。そもそも長屋などの各一般家庭には風呂が無い。銭湯も慶長年間までは今のような浴槽に湯を張る形態ではなかった。


第三に一日中熱いとはいえ、やはり通常のピークは12時~15時であり、朝夕に撒いたところで日中のピーク時間の温度を下げる効果はないに等しい。 

 

実は小学校の時、夏休みの自由研究で打ち水の温度低下については実験していた。打ち水をすると涼しくなるという仮説の下に実施した。

青森県八戸市なので7月後半から8月中旬で数日30℃越えがある程度だが、それでも打ち水に効果があるとは言えない状況だった。というか、オレは打ち水しても涼しくないという結果を書いて出した。一瞬気温が下がっても効果は持続しないし。

 

撒く水量や回数は重要である。

 

 というわけで、撒く水量や回数、あと風の有無などを可変にして測ってみて欲しい。近くに水を撒かない比較対象もあるとわかりやすい。とにかく、とんでもなく撒かないと温度下がったって言える数字にならないはず。あと、ちょっと撒いただけで風が無いと湿度が上がってWBGT(暑さ指数)が上昇する。

 

環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは?

http://www.wbgt.env.go.jp/img/doc/wbgt_lp_2.png

 

暑さ指数を出してくれる温度計(でいいのか?)もたくさんある。小学生のお小遣いの範囲で考えるとちょっと値段が張るけど。一番上のA&D みはりん坊ダブル AD-5687で1台1,895円なので、打ち水する場所打ち水をしない場所の2か所を同時に測るために2台買ったら3,790円。正式には黒球式じゃないといけないみたいだけど、夏休みの自由研究にはオーバースペックだろう。TT-562GDは1台7,200円もするし。

A&D みはりん坊ダブル AD-5687

A&D みはりん坊ダブル AD-5687

 
佐藤計量器製作所 パーソナル快適チェッカー PC-7960GTI

佐藤計量器製作所 パーソナル快適チェッカー PC-7960GTI

 

おじいさん、おばあさんの熱中症対策に効果がありそうなので、実験で使ったあとはおじいさん、おばあさんにプレゼント。というか、おじいさん、おばあさんに買ってもらってちょっと実験用に借りるというのはどうだろう。

 

普通の温度湿度計でもそこそこの値段はするので、AD-8657はお得かも。

 

 あとネットを見ると打ち水についてあれこれ情報もある。

 

論文も参考になる。

打ち水による熱環境緩和作用
Mitigation Effects of Thermal Environment by Watering 」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/prohe1990/52/0/52_0_277/_pdf

まとめをちょっと引用する。

 本研究では東京都心部を対象とし,大気シミュレーションに基づいて打ち水の効果を検討した.まず気象条件の制約による蒸発や気温低下のポテンシャルを調べるため,水量制約を考えずに約10km四方を全て完全湿潤
面としてシミュレーションを行なった.この結果,正味放射のほとんどが潜熱フラックスとして大気へ放出され,気温低下は1.5℃にも及んだ.しかしながら,現実的な散水量を想定した場合,都市・街区スケールで周辺の気温を下げるほど効果は期待できないという結果となった.

この論文ではあんまり期待できないよというまとめである。

 

打ち水によるヒートアイランド緩和効果のシミュレーション評価
SIMULATION EVALUATION OF MITIGATION EFFECT OF URBAN HEAT ISLAND BY WATERING」

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00028/2009/53-0052.pdf

こちらもまとめを引用する。

打ち水によるヒートアイランド現象緩和を目的とした社会実験が 8月 18~25日まで行われた.著者らは,重点地区として打ち水が行われた東京都墨田区東向島において,気象観測を行った.その観測結果より打ち水が都市の熱環境に与える影響について気温低減効果の評価を行った.本研究より得られた知見を以下に示す.
(1) 多数の地元住民の協力を得て打ち水を行い,最大量ともいえる散水を行った結果,散水面積は実験エリア全体に対して 3%,実験エリア内における道路面積に対して 11%であった.
(2) 日射変動の影響を避けるため,日射量が打ち水開始前後1時間でほぼ一定であった8月18日を中心に解析対象とした,この日は11:55 に打ち水が開始され,打ち水エリア内と外で比較すると平均値で約 0.5℃の気温低下効果が見られた.
(3) 打ち水の効果時間はどの時間に散水しても 1 時間程度である.どの時間に巻いても効果が変わらないことから日中に打ち水をし,気温のピークを抑えることが熱環境上効率がよいと考える.
(4) 打ち水により地面からの長波放射量が減少し,人の表面温度が 36℃から 30℃へと低下した.気温の変化が1℃以下に対して人の表面温度が 6℃であることから,打ち水により冷やされた地面からの長波放射量を激減
させる効果が大きいことを示した.
(5) 観測結果より打ち水による効果は大きく分けて「気温の低下もしくは上昇の抑制」と「輻射の抑制」があり,大きな熱環境緩和効果がある.

こっちの論文は、人の表面温度が6℃下がったという効果があったというまとめである。1時間しか効果無いけど。あと朝夕じゃなくピーク時に撒けって話になっている。WBGT的には効果ありそう。ただし「最大量ともいえる散水」ってことは、一般的な打ち水っていうよりは、東本願寺の散水・放水って感じに近いかもしれない。

 

まあ、2020年に水不足とならないといいけど。

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