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【仮題】他のエンジニアがすぐに代替案出せる内容に対して「できません」「だめです」というのはエンジニアに向いてないと思うよ

「銃が作れるから3Dプリンタは規制対象」っていう論法なら、あらゆる犯罪者が水と空気を使うので水と空気を規制すればいいのに(挨拶)。

 

今回は上の3Dプリンタ規制の話のように、多くの人が知る(あるいは興味を持つ)ニュースではないので、前提知識(というか情報)を書いたため本題に入る前が長い。まあ、いつもだってESXiだのAndroid-x86だの多くの人が興味持たないことを書いているわけだが、検索で来る人には目的とする情報だったりするので前提知識はそれほど必要ない。しかし、このエントリは一地方の話なので先に前提知識を書いておく。

 

すでに旧聞とも言える話題である。佐賀県の県立高校でWindows 8タブレットを授業に使うことにしたが、全36校中34校で電子教材がダウンロードできないトラブルが起きたとのこと。ぐぐってみるとこんな感じ。あまり大ニュースになってないw。全国紙は2紙かよ。地元紙ヒットせずかよ(一応ニュース検索するとヒットする)。

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ちょっと長めに引用してみる。引用元は先に報道した読売新聞。

授業用タブレットで不具合続出…開始に大幅遅れ : IT&メディア : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

今年度から、すべての新入生が授業用のタブレット型端末を購入した佐賀県の県立高校で、参考書などの電子教材をダウンロードできないトラブルが相次いでいることがわかった。

 

 県教委によると、トラブルは全36校のうち34校で発生。電子教材の情報量が多いためとみられ、端末を使った授業の開始は当初予定より1か月遅れ、早くても5月中旬頃になる見通しという。

 

 県教委によると、問題の電子教材は、主要5教科(国語、数学、英語、理科、社会)のほか、美術や家庭科の参考書や問題集など計52種類で、教科書会社11社が作成。生徒が授業中に教科書会社のサーバーからダウンロードしようとしたが、授業時間(50分)内に終了しない事態が続いている。県教委が調べたところ、名画などが多い美術、実験の動画が含まれる理科など、情報量が多い教材ほどトラブルも多いことが判明。生徒40人がダウンロードを完了するまでに8時間以上かかるケースもあるという。

で、これって導入が決まった時点ではどういう話だったかを調べてみる。今度は2013年7月10日付けの日経パソコンの記事。

佐賀県教委、全県立高校でWindows 8タブレット導入を決定

佐賀県教育委員会は、2014年4月から全県立高校の新入生約7000人に、1人1台のWindows 8搭載タブレットを導入すると決定した。これまでiPadWindows 8タブレットの双方で検証してきたが、2014年度はWindows 8タブレットを採用することにした。

 

 当初の計画では、2013年度に36の県立高校全てでタブレットの活用を始める予定だったが、Windows 8タブレットiPadのどちらを選定すべきかという検証が間に合わず、2014年度に持ち越した。2013年度は、5つの実証研究校を2校と3校に分け、Windows 8タブレット520台とiPad520台をそれぞれ導入し、検証を続けてきた。

  

 その結果、2014年度はWindows 8 Proのタブレットを導入することに決定した。「先生方は普段からWindowsを使っていることもあり、例えば1時間目の授業で使った教材を3時間目までに作り直すといった場合に、即座に対応できるWindowsタブレットの方が使いやすいとの声が上がった。iPadはビューワーとして優れているが、編集・加工までiPadだけでやろうとすると難しい」(教育情報化推進室の福田孝義室長)といった点などが選定の理由として挙げられるという。

そして時間が進んで12月。お金の記事が週アス(12月18日付け)に。

佐賀県の県立高校が導入する5万円のWindowsタブレットは、高い?

12月10日には佐賀県教育委員会と“Windowsクラスルーム協議会”(日本マイクロソフトなど45社で構成)が、教育の情報化についての共同研究を開始すると発表。12月13日には佐賀県教育委員会が、高校に導入するタブレットの機種を『ARROWS Tab Q584/H』に決定したと発表するなど、詳細が明らかになりました。

 

 このWindows 8タブレットの購入にあたり、県立高校の新入生は1人あたり5万円の負担が求められます。

(中略)

 これらの構成を富士通の直販サイトで購入しようとすると、Officeやキーボード、3年間の保証を含めると、価格は少なくとも12万円以上。一方、佐賀県向けモデルでは本体価格が7万4千円となっており、かなりの割引が設定されていることがわかります。

 

というわけで、佐賀県の県立高校に今年入学した1年生は家庭の5万円負担でこのARROWS Tab Q584/H(脱着可キーボード付き)を買ったということがわかる。記事には無線WANという文字が出てこないことから、通信はLANを想定したモデルという事が考えられる。

佐賀県教委の決定という事なので、県立高校に県が掛けている何らかの費用により校内インフラ+インターネット接続が整備されたという事が推測できる。また、今時お得意の0円入札はまずいよねー(棒)という感想を持ったが、それでもそこそこの値引き額で74,000円。県は生徒分のタブレットだけで(74,000[納入価格]-50,000[家庭負担分])×7,000[生徒数]=1億6,800万円の負担。教員用・予備などをどうするのかは記事からは分からなかったが、もし全額教員負担以外(=県が一部あるいは全額負担)なら、2億円程度の予算執行ということだろう。県の予算や地元紙報道などをまじめに調べれば分かると思うが、本筋ではないのでタブレット側の話はここまで。

 

ようやく今回の本題に近づく。

なんでダウンロードが間に合わないことが5月に報道されるのか。4月から使い始めるということは、昨年の予算立案時に決めていることで、地元紙の佐賀新聞では各高校の無線LAN整備の予算も執行されたと報道している。

公共工事、12.7%増 2013年度県内/佐賀新聞ニュース/The Saga Shimbun :佐賀のニュース (下線・太字はオレ)

 県は31・8%増の384億800万円で、高校の施設整備や緊急経済対策による防災・減災事業が目立った。主なものは全県立高校での生徒用タブレット端末導入のための無線LAN整備(12億1200万円)佐賀北高校改築(計6億8300万円)。緊急経済対策では、白石平野のポンプ整備(4億7100万円)など農地防災事業のほか、玄海有明海地区の漁場保全事業(計4億2700万円)など。

既存設置分(有線・無線)などは不明だが、12億1,200万円なので、各校で数千万円単位の無線LAN+インターネット接続の設備投資が行われたことになる。高校に設置するということになると家庭とは違うので、校舎渡りやフロア渡りは有線で敷設したりする。そういうわけで、無線LAN機器費用よりも有線LAN工事費用の方が多い可能性もある。近年建設のオフィスビルみたいに最初から回線を通すように配慮されていない建屋だと、モールを貼る等の軽い工事を前提としても結構費用が掛かる(工事やさんの人件費)。

 

ここでようやくエントリタイトルの話。

元々の読売の記事は見てたけど、「授業用タブレットでダウンロードの不具合の件。そもそも「みんな一緒」ってのが問題なんだよ。インターネットなんかのITインフラは十分に整ってきたと思うんだけど、僕達のメンタリティが、それを活用することを阻害しているんだよね。 - fintopoを見て、全く違う意見を持った。ブクマコメントを下記のように書いていたが、オレしかブクマしてないしブクマした後忘れてた。

昨日RetweetsやFavが数件入ったので、きちんと書いておいた方がいいかなと。

 

タブレットを使うという点についての注目が集まり、インフラ面はあまり報道されていないわけだし、真剣に情報を集めていないからアンオフィシャルな話は少ししか漏れ伝わってこないのだが、それでも報道により2013年度に無線LAN+インターネット接続関係で12億1,200万円(36校分)を使った話は分かる。

でだ、当該ブログエントリでは「みんな一緒」を否定している。オレの意見は違う。エンジニアとして見ると、制約となるヒト+モノ+カネとスケジュールの中で最善を尽くすべきだし、それができる状況だった話なのに「みんな一緒」を否定するのはエンジニアに向いてない。

 

無線LAN整備+インターネット接続が2013年度の予算執行ということは、数年前から予算化に向けて動いていたはず。本来このような建屋内の設備の場合、利用者数は分かっているので利用者数分のキャパが足りていることが前提となる。言い換えると、まず予算金額のベースを弾き出すためにはキャパシティプランニングが必要。学校に敷設するネットワーク設備の場合、授業時間に集中して使うわけで、教室で同時○名、1学年に□クラスというのは各校ごとに分かる。どの程度の通信量(ダウンロード・アップロード)が発生するのかも、使用する教材などから算出できる。

今年は1年生分だけとして予算化して数か年で整備するのか、最初から3学年分を予算化するのは予算獲得する側(今回は県教委?)と県との綱引き。総額は決して小さくないので一気に予算計上できない可能性がある。

 

当然こういう額の予算化なので、ベースとなる机上のキャパシティプランニングだけでは予算をつける側(県)を納得させにくいはず。予算審議中の減額要求に負けないための武器としては、実測値が一番。実測していればボトルネックや飽和点も見えるわけで、削れない限界を主張可能。

学校や企業などで使用するグレードの無線LANアクセスポイントの場合、同時接続数のカタログ値が出ていたりするわけだが、当然のことながら同時接続数と同時アクセスでは話が違う。県教委に無線LANのエンジニアがいて、各校の設計をするなんて話は日本のお役所関係ではほぼありえないので、外部のSIerやNIer(ネットワーク・インテグレーター)に発注して調査・設計したはず。

となれば元々想定されていた同時通信量に間違いがあったり、その間違いがあっても間違いが明らかになるはずのハイトラフィックテストをやっていなかったりという話。実際に設置施工したLAN工事やさんのミスではないと思う。県のお仕事なんで予算執行条件は細かく決められていそうだし。図面通りにモノ作ってたら怒られる筋合いでは無い。

 

ブコメにも書いているが、無線LANは規格化されているIEEE802.11なんちゃらだけでなく、その規格化手前で各無線LANメーカーは、様々な利用形態に対応して安定した性能が出せるような技術を開発している。学校や企業で利用するグレードのアクセスポイントやコントローラだと、規格化された部分だけの仕様で機器を作っている安いメーカーと、独自技術を組み込んでいる機器のメーカーでは性能が大きく違う。価格は大きく違う場合もあればそんなに違わない場合もあるが。ただ、与件としてのキャパを充足する性能と費用でみればそれほどの価格差が無い場合が多い。

例えばの話。Aメーカーは1教室4台のアクセスポイントが必要でチャネル設計がややこしくて、生徒がタブレットを持って教室内で移動すると性能低下や切断が発生する。同時に使うと遅延する生徒が発生する。一方のMメーカーは1教室2台のアクセスポイントで上記のような面倒が無い。機器あたりはAメーカーが安いが1教室トータルでは大差ない  などということ起こりうる。同じ予算内ならMメーカーを入れたほうがいいわけだが。与件に対してどこまで制約(ヒト+モノ+カネとスケジュール)の中で最善を尽くすかという話。

実際に複数の無線LAN機器メーカーの代理店をやっている専業企業で、PC数十台(教室規模)の同時大容量ダウンロード(動画ファイルで実施)デモンストレーション環境見せてもらったけど、同条件で何度やっても速いメーカーと遅いメーカーは明らかに差異がある。

 

今回の話だと2013年度の無線LAN整備予算化については、多分2012年度で無線LAN見積の予算が出ていて、各校ごとに無線LAN整備の予算が算出・積算されていたのではないだろうか。各校ごとに設置条件(特に有線部分)が異なるのに、現地を見ずに予算化できるとも思えない。そしてそれほど過小見積ではない。

一方で与件(同時通信量など)を出す側のミスは想定できるが、ハイトラフィックテストをすればそのミスも露見する。

ここまで長くなったが、合わせて考えると無線LANのせいでダウンロードが遅滞しているとすると、犯人の特定は難しいものの、誰かの手抜き・ミスの可能性が高い話だと思っている。相当なケアレスミス。金を貰ってやる仕事のレベルじゃない。

 

今回はWindows 8タブレット(無線LANのみ)だが、同じWindows 8でも有線LANポートを持つPCではどうだったのか。無線LANのせいではないのかも(=インターネット接続から外側がボトルネック)しれない。 

無線LANのせいではなく教材メーカーのサーバのせいだとすると、これは県がお金を払うまでも無く解決できる。県教委が教材メーカーにプレッシャー掛けるだけ。それだけのダウンロードが発生するという事は、それだけの分量の教材購入が発生したわけで、金だけ取って設備はそのままというのはおかしい。AkamaiのようなCDNを使うなり、サーバ増強するなり、一時的にでも各校にダウンロード用サーバを設置するなり、手は色々ある。これだって急に4月に分かる話ではなく、教材選定された時点で分かる話。これは明らかに県教委のミス。犯人を外注先に押し付けたいという事であれば、県教委にコンサルしているコンサルタントのミス。

 

教材の作り方?これまた動画を含めた大容量データを同時配信しながら授業を進める仕組みは存在する。

SCORM対応だと、1コンテンツ1授業(あるいは複数コンテンツ1授業)だったりするので、1ダウンロードごとにはそれほど大容量にならない。

 

いずれにせよ、4月になる前に分かるはずの話。そういうわけでオレは「みんな一緒」がいけないとは思わない。年間を通してどういう使い方をするのかというロールプレイングできていれば、色々な手がある。

例えば静的なコンテンツの教科書(1年分)を一気にダウンロードする必要があるとして、それだと年1回の大トラフィックという事になる。それならタブレット販売者の富士通プレインストールというかキッティングさせればいい。その分のフィーを払っても、年1回の大トラフィックに合わせたネットワークインフラを作るよりも安いかも。

 

てなことを、金融機関向けに国内最大のxxオンラインを、副プロマネとかアーキテクトとかコンサルタントとして(だから最低3つはやったってことね)して経験した人間としては思うわけ。そしてそういうことをやってる最中には大体「無理」とか「できない」って懇切丁寧に教えてくれる”(自称)できるエンジニア”がいるんで、「思い出し笑い」ならぬ「思い出し怒り」をしていて、こんなエントリが出来上がるというわけw。ま、大体の場合制約(ヒト、モノ、金、スケジュール)内でできるんだけどね。

 

上を見なきゃ。下はなんぼでもいるけど。エンジニア名乗るならエンジニアリングを提供しないと、IT業界以外の(きちんとした)エンジニアさんにIT土方呼ばわりされても否定できないじゃん。

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