Citrix売却のニュースが出てた。
Citrixは知らない人は全然知らないけど、知っている人はすごく知っている仮想化技術の企業である。ハイパーバイザーのXenは2007年に開発母体のXenSourceをCitrixが買収済み。MicrosoftのHyper-VとXenは同一の仮想化コアである。
XenとHyper-Vの一件をとっても、CitrixはMicrosoftと大仲良し(だいなかよし)である。「だいなかよし」という表現はかつてのボスの表現で、それを聞いて以来、自分も気に入ってMicrosoftとCitrixの関係を説明するときに使わせて頂いている。
そしてCitrixとMicrosoftは、ハイパーバイザー以外の分野で昔から深く結びついている。リモートデスクトップである。
UNIX系がX Window Systemでリモートでウィンドウシステムを利用できる仕組みを持っていたが、初期のWindowsにはそのようにOSとウィンドウシステムをネットワークを介して遠隔利用する仕組みは無かった。
最初はCitrixがWindows NT 3.51に対してWinFrameというリモートデスクトップサービスを開発、1997年にWindows 2000 Server以降でWindowsの標準機能として取り込まれた(参考:リモートデスクトップサービス - Wikipedia)。
かつてのボスの「だいなかよし」という表現はここから来ている。どういうビジネスモデルかというと、Windowsの開発を行うMicrosoftとリモートデスクトップ部分の開発を行うCitrixは、リモートデスクトップ部分の開発について密接に協力。新しい機能はCitrixが有償で販売、スタンダードになった部分はMicrosoftがWindowsに標準搭載。新しい機能を使いたければCitrix製品を買えばいいし、ごくスタンダードになった機能だけでよければWindows標準の機能を使えばよい。そんな形で住み分けをしてきた。それは、現状で最新サーバOSのWindows Server 2012 R2でも同じである。
Citrixのリモートデスクトップ/VDI(Virtual Desktop Infrastructure)製品は、WinFrame、MetaFrame、Citrix Presentation Server(略称:CPS)、さらにはXenApp/XenDesktopと名前を変えてきた。
リモートデスクトップとVDIに違いが無いわけではないのだが、このエントリの本筋ではないので詳細は割愛。
一時期、「シンクライアント」という形でリモートデスクトップ/VDI機能を利用することが先行した。そのため、クソジジイどもはリモートデスクトップ/VDI形態を「シンクライアント」略して「シンクラ」と呼んだりするのだが、クライアント側がThin(薄い)であればシンクライアントだが、普通のFatクライアント(PCやMacなど)ならシンクライアントではない。ムカつきを思い出したのでちょっと脱線したw
Windows上のリモートデスクトップ/VDI対抗製品は、Microsoftとの密接な関係を持つCirixのリモートデスクトップ製品に機能面で勝つことが難しく、セールス的にはCitrixを凌駕することは無かった。
同じく「仮想化」の企業であるVMware。VMware Horizon View(旧VMware View)は、ハイパーバイザ市場での優位性をもとにセールスしているが、シェアでは劣後している。Citrixは技術的にもHorizonは劣るとしている。結構あけすけな書き方である。
多くのリモートデスクトップ製品を持つ企業はすでにどこかに買収されているが、近年まで単独で残っていた2Xも、すでにParallels傘下である。
とまあ、ここまでがこれまでのWindows系のリモートデスクトップ/VDIのざっくりとした歴史である。長い前置きでもある。
上記で書き漏れたが、アプリケーション仮想化もリモートデスクトップ/VDI近接の技術である。CitrixはXenApp、MicrosoftはApp-VやRemoteApp(違いを書くとまた長くなるのでなぜ2系統あるのかは割愛)、VMwareのThinAppなどがある。Symantecが買ったAltirisとかどうなったんだろう。
今回Citrixは会社丸ごとDellを売却先としている。上記の経緯を考えると、リモートデスクトップ/VDI/アプリケーション仮想化は、ほぼ機能開発を終えた、それはCitrixがWindows Server標準搭載よりも高機能のリモートデスクトップ/VDI/アプリケーション仮想化を売るというビジネスモデルの終焉と考えたのではないだろうか。
確かにMetaFrame時代から比較すると、Windows Server 2012の時点でWindows標準のリモートデスクトップサービス(RDS)やRemoteAppでOKなケースは増えている。Windows Server 2016になればなおさらだろう。PC/Mac/シンクライアント端末だけでなく、iOSやAndroidなどのスマホ/タブレットのサポートもすでに終え、クライアントが無償で動く。
テレワークなどでリモートデスクトップ/VDIが活用されているので、これからも数年は市場は堅調だろう。売り時はまさに今ということなんだと思う。
Dell傘下になれば、これまでのように大幅な機能改善は無くなるかもしれない。しかし、成熟を迎えるということはこういうことかもしれない。
このブログではリモートデスクトップ関連のエントリが多いので、参考にしていただければ幸いである。全部Windows Server標準だけど。
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