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てきとーに生きている奴の日記

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輸出管理の基礎

今週のお題「夏休み」

 

報道機関って輸出入管理は習わないんだろうか。IT屋でさえ知ってるしのに。

バカなのかミスリードしたいのか、または意図せず両方なんだろうな。 

 

経産省やCISTEC等のサイトを見ればきちんと書かれてるから、そっちを見ればいいんだけど、超簡単にサルでもわかるレベルで書いておく。10年前、セミナーでオレが講師やった時のものを流用しているので、ベースはちょっと古いし物品よりはソフトウェア寄りである。適宜最新の情報を付加しているが、全部最新に更新できてはいないと思うのでそこのところは自分で調べてね。

 

輸出とは

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「技術(役務)を海外ないし非居住者に提供すること」ってことは、実はネット接続して、海外や非居住者がアクセスできるサーバに置いた時も該当するのである。

 

輸出に当たる行為の例

下記は輸出にあたり「安全保障輸出管理」が必要である。

  1. 出張時に個人使用目的以外で物品を海外に持ち出す。
  2. 日本国内で外国人来客に技術資料を提供する。
  3. 外国籍の従業員にアメリカ原産のプログラムや技術をアクセスさせる。
  4. 海外オフショア技術者に対して仕様書等の技術資料を提供する。
  5. 顧客が日本や米国製品を海外で使用する(ネットワーク経由の使用を含む)
  6. 日本の販社が海外に販売するために、製品を販売する。
  7. 電子情報をインターネットでダウンロード可能にする。
     (ID/パスワードを渡した時点で輸出となる。)
  8. 電子情報をeメールで海外に送付する。(メールでの情報提供も輸出にあたる場合があり、経済産業省から役務取引許可証を取らなくてはいけない場合もある)
  9. 外部購入品を海外へ送付する。

 

非居住者と居住者

「居住者」とは日本国内に住所又は居所を有する日本人又は日本国の在外公館に勤務する日本人。日本国内にある事務所に勤務する外国人。
それ以外は「非居住者」。海外に2年以上滞在する日本人、海外事務所に勤務する日本人は、非居住者扱いとなる。

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輸出管理の重要性

輸出管理は企業の危機管理にとっても極めて重要。

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昔の資料からそのまま引っ張っているので外為法違反事件は最新で2006年なので注意。

 

違反原因分析(2005~2006)

該非判定(後述)未実施が最も多いということは、サボったか知らなかったかだが、知らなかったでは済まされないことになっている。

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輸出法令の仕組み

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米国輸出管理規則(EAR)

日本の外為法上の規制だけでなく、このEAR上の規制があることを忘れてはいけない。

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  • ・米国EARの輸出規制は、米国の国家安全保障や外交政策がメインとなっており、そのため、米国製品の再輸出についても、規制を行っている。
  • EARの規制対象製品を日本から再輸出するには、事前に米国商務省安全保障
    局(BIS)の許可取得が必要な場合がある。
  • こうした米国の再輸出規制に違反すると米国の違反者リストであるDPLに掲載され、米国製品の取引ができなくなったり、米国内に入国した際に、逮捕拘束される可能性がある。

 

2019 米国輸出管理改革法(ECRA)

米国の輸出管理改革法(ECRA)が2018年8月13日、2019会計年度の国防授権法に盛り込まれるかたちで成立しました。既存の輸出規制でカバーしきれない「新興・基盤技術(emerging and foundational technologies)」のうち、米国の安全保障にとって必要な技術を輸出規制対象とすることなどを定めています。明確な「新興・基盤的技術」の定義は未だ固まっていませんが、今年度中を目途に細則が固まる前に、法律の内容や概要について理解し、準備を進めることが望まれます。

つまりEAR ⊆ ECRAで変更点が発生しうる。

 

米国の輸出管理改革法(ECRA)に関する基本的QA

CISTEC事務局が出したECRAに関する基本的QA(PDF)のリンクを貼っておく。

http://www.cistec.or.jp/service/uschina/3-ecra_qa.pdf

なお、禁輸国向け以外への輸出・再輸出や、禁輸国籍者以外へのみなし輸出・再輸出であっても、リスト規制はかからないものの、前掲の大量破壊兵器用途、テロ用途等のエンドユース規制やエンドユーザー規制は適用されます。

 

「武器禁輸国」は、2019 年 1 月初めの時点で、下記の 21 ヶ国です。(ロシアは武器禁輸国ではありませんが、中国は武器禁輸国に含まれます)。
Afghanistan/Belarus/Burma/Central African Republic/China (PRC)/
Congo,/Democratic Republic of Cuba/Cyprus/Eritrea/Haiti/Iran//Iraq /Korea, North/Lebanon/Libya/Somalia/South Sudan,Republic of Sudan/Sudan /Syria/Venezuela/Zimbabwe 

 

他方、「禁輸国」は、多義的な概念であり、必ずしも、明確に定義されていませんが、通常は、EAR Part 746(Embargoes and Other Special Controls)において規定されている国の内、EAR 対象品目(EAR99(=リスト規制対象外)を含む)の輸出・再輸出(イラン以外の下記国向け)、又は輸出(イラン向け)につき、原則として許可が必要とされている下
記の国が、禁輸国と考えられています。なお、ここで、ウクライナのクリミア以外の下記の国については、上記の「武器禁輸国」にも含まれています。
イラン/北朝鮮/シリア/キューバウクライナのクリミア


いずれにせよ、今後、新基本技術自体の具体的なリストが公表される際に、具体的な「禁輸国」等の規制対象仕向国も明確に規定されるものと思われますので、その際の再確認が重要です。

 

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WAとはワッセナー・アレンジメントの略。

 

ワッセナー・アレンジメント

WAという単語が出てきたのでこちらも追記。

ワッセナー・アレンジメント英語Wassenaar Arrangement)とは、通常兵器の輸出管理に関する、国際的な申し合わせである。42ヶ国が協定を結んでいる。「ワッセナー」はオランダハーグ近郊のワッセナーで設立交渉が行われたことに由来する。通称「新ココム」。正式名称は通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント英語The Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies)。

 韓国は参加国、中国は参加してない。

 

該非判定

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役立つページがあったので貼っておく。


キャッチオール規制とは

該非判定が終了し、許可が不要であるときには「キャッチオール規制審査」を行う。

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まとめ

今回騒いでいる某国が騒いでいることによって、現在の某国政府が輸出入管理について全く理解していないことを証明してしまっている。日本のホワイト国認定は上記の輸出管理を適切に行うことを前提としている。適切な輸出入管理を行い、エンドユース、エンドユーザまで管理されていることを証明しろと言っているだけである。

現政権になってから日本からの催促を3年間無視し続けたため、経産省は日本の外為法だけでなくEAR、ECRAやWA違反の状態を疑わざるを得ない。

輸出入管理はすぐ上にも書いてある通り、「世界の平和と安全を守るため」であり、輸出処理は2国間の話なので、他国や国際機関に訴えても日本の正論の方が優先される話である。

サボってた事務処理をやれば輸出されるので、騒げば騒ぐほど墓穴を掘る話である。小学生が夏休み(ようやくお題につながったw)の宿題をサボって提出せずに、あっちこっちに「○○先生は夏休みの宿題を出せって言うひどい人です」って言って回っても、「宿題出せば~w」でスルーされるのと同じ。

 

今日言いたいことはこんなところです。

キャッチオール輸出管理の実務 第3版

キャッチオール輸出管理の実務 第3版

 
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