VWやBMWが米国EPA(環境保護局) の排ガス規制、「Tier Bin2」を不正なソフトウェアによって通過させていたという。下記の記事が分かりやすい。4ページある。
不正の手口は、排ガステストの時はあらかじめテストパターンが決められており、テストだなと検出したら試験対策用ロジックに切り替えて、動力性能を犠牲にして排ガスを抑えるというもの。
3ページ目から引用する。
さて、この問題は果たしてフォルクスワーゲン固有の問題なのだろうか? フォルクスワーゲンの制御プログラムを作っているのはドイツのメガサプライヤー、ボッシュだ。もちろんボッシュが単独でできることではない。フォルクスワーゲンのオーダーか、協議があってこうした不正プログラムを作成したはずで、その共犯責任がどうなのかは司法の範疇で、誰の何の証言も聞いていない筆者が書くと完全な予断になってしまう。これについては推移を見守りたい。
フォルクスワーゲンとボッシュがそういう“抜け穴”を使っていたことは、ボッシュをサプライヤーとして使う他メーカーも知っていた可能性は高い。「何故フォルクスワーゲンはユーロ5規制のクルマを北米で売れるのか?」「何故フォルクスワーゲンのクルマはユーロ6をクリアしながらあれだけの出力が出ているのか?」と問い詰められれば、言い訳のしようはないからだ。
そこで他メーカーが、裏プログラムのカラクリを聞いた時に、どういう判断を下したのかが重大な問題だ。すでに外紙の一部はBMWも欧州規制に対して同様の不正があった可能性について記事にし始めている。いまのところBMWはこれを否定しているが、今後どうなるのかはまだ分からない。一歩間違えば、ボッシュにシステムを発注している欧州メーカー各社が芋づる式に連座する可能性があるのだ。
ちなみにボッシュはメルセデスのBlueTECにもシステムを提供しているようだ。
AudiはVW傘下。これでドイツの3大プレミアムブランドが揃って討ち死にの可能性が出てきた。
----2015/09/28 8:30追記
どうやらボッシュが「テスト用」として提供したプログラムをVWが市販車に搭載し、ボッシュは指摘していたという形らしい。それならボッシュがディーゼルシステムを納品する全社ではなく、各社ごとということになる。
【新聞ウォッチ】 VW排ガス不正、ソフト納入のボッシュ07年時点で違法性警告 | レスポンス
----追記ここまで
これまで販売した車については、米当局や独当局がどのような決定をするのか分からない。ヘタすると罰金だけでなく、該当の1,100万台について車を全とっかえ、あるいはエンジンを全とっかえも無くはない。購入者からの訴訟もありうる。そうなったらVWは販売台数世界首位(か2位)から一気に債務超過→倒産ということもありうる。
でだ。売ってしまった分はペナルティを受けるしかないんだが、それだけではなく、VWやBMWはこれから売るエコカーでも困る。日本ではトヨタがコツコツとハイブリッドを育て、他のメーカーにも技術供与・エンジン供与してエコカーの中心になっている。古いバージョンは情報公開もしている。独自開発のメーカーも、ベンチマーク先があるので開発しやすい。
一方欧州メーカーは、ハイブリッドは過渡期技術ということで力を入れていない。一足飛びにEV、燃料電池車などを見据えている。
全くハイブリッドをやっていないわけでもないが、ディーゼルよりも高価になるので、トヨタがAQUA/プリウスでやっているように台数を売るという位置付けではない。
安くエコカーを仕立てる必要は今まで通り。でもハイブリッドで価格を下げるのは難しい。そこでひとネタなのだが、だったらディーゼルをハイブリッドに仕立てるというのはどうか。
ここまで単に「ハイブリッド」としてきた。トヨタの説明が分かりやすいので下記に紹介。
ハイブリッドシステムは大きく3種類。図を引用する。
エンジンで充電しモーターで車輪を駆動
パラレルハイブリッド
モーターとエンジンで車輪を駆動、モーターを使ってバッテリーを充電
シリーズパラレルハイブリッド
モーターとエンジンで車輪を駆動、発電機で発電し自分で充電することも可能
プリウスなどは、一番下のシリーズパラレルハイブリッド。確かに機構が複雑になる。安く作るのは量産効果しかない。トヨタの優位は揺るがない。
オレの提案は、EVをやっていればすぐに作れる、シリーズハイブリッドの発電用エンジンにディーゼルを使えっていうもの。もちろん今のサイズ(排気量)は必要ない。
ヨーロッパでディーゼルを使う層の多くは、長距離走るのだろう。EVは航続距離や充電時間的に論外である。走っている間に動力とは関係無く低負荷で排ガスをクリーンな状態で淡々と動かすのであれば、今のVWやBMWのディーゼル技術(というかボッシュのディーゼル技術)でも排ガス規制をクリアするのは容易だろう。なにせ、現状は専用ロジックで動力性能を犠牲にして不正に規制通過したわけで。それに排気量を極限まで小さくすれば、ガスの排出量も相対的に減る。
ディーゼルである必然性は油種。ガソリンよりも軽油は安いし、ディーゼルの場合は植物性燃料など適応範囲が広い。
問題は排気量/エンジンサイズとバッテリーと燃料タンクの大きさ/重量のバランス。EVである日産リーフは、24,000Whのリチウムイオンバッテリーを積んでいる。重量はユニットで294kg(PDF)もある。航続距離はJC08モードで228km。発電しながら走るのであれば、こんなに積まなくていい。フル充電でスタートして、1,000km走れれば文句も出ないはず。それだけ走れば、運転手が複数乗ってて交代しながら走るとしても、何度かは休憩するので急速充電で補充も考えられる。従来のディーゼル車でも給油するわけだし。
動力として使う4気筒エンジンだと、普通車で100kgを超える。単気筒だと色々やっかいなので2気筒にして、排気量削ってバイクの250~400ccエンジンくらいのサイズにしちゃえば40kg~50kgくらいで収まるだろう。これでどれくらい発電できるんだろう。
面白そうなので、今回ボッシュのディーゼルシステムを買っているメーカーは、シリーズハイブリッドPHEVでディーゼルやらねえかな。