また今年も、日本生産性本部による労働生産性の調査結果が発表された。
@Pressというサイトにも。
昨年までとの違いはGDP新基準で算出されたこと。これは後述する。タイトルに【再掲】とした通り、まずは労働生産性の式を再掲する。
簡単に言えば、労働生産性が高い=就業者数に対してGDPが大きい、あるいは労働生産性が高い=GDPに対して就業者数が少ない。労働生産性が低い=就業者数に対してGDPが少ない、労働生産性が低い=GDPに対して就業者数が多いである。単純な割り算。
また「日本の労働生産性が低いのはサービスし過ぎるからだ」という、労働生産性の算出式を踏まえない発言が増えそうである。しかし、日本の労働生産性が低いのは、GDPに対して就業者数が多いからである。GDPはご存知の通り、世界で3位。
このサイトのものは2016年10月5日更新で、2015年のもの。あ、まだ2016年終わっていないから2016年は出せないな。間違いなく最新。
米国は18,036,650[百万米ドル]、中国は11,181,556[百万米ドル]、日本は4,124,211[百万米ドル]、4位のドイツは3,365,293[百万米ドル]。1位米国、2位中国は数字が近く、2位中国と3位日本は倍半分以上の差、3位日本と4位ドイツは数字が近い。統計があてにならない中国だけど、これってどう見ればいいんだろうか。今回の話には中国は関係ないけど。
日本の場合、GDP3位なのに労働生産性が低いということは、就業者数が多いということである。そんなわけで、日本の場合労働生産性を上げようと思ったら、就業者数を減らすほうが早い。少子高齢化で労働力も不足するという予測になっているし。
いいか悪いかでいえば、図の通りあまり良くはないけど。
GDPを上げるということで言えば、値上げするというのもありである。労働生産性を上げるなら、人数掛けた分は稼げばいいとも言える。
どっちがいいですかね。
今回、労働生産性の国際比較報告書全文(PDF)で言及されたのは、
日本と他国との労働生産性水準の差を考える上では、日本が2016年末に移行を予定している新しいGDP体系(2008SNA)による影響もある。主要国のほとんどが既に2008SNAへと移行しているが、研究開発(R&D)支出、雇用者ストックオプション・確定給付型企業年金等による年金受給権、政府や公的企業の分類基準などの統計上の扱いが変更された関係でGDPが概ね3~5%程度過去に遡って上方修正されている。しかし、今回計測した日本の労働生産性は旧基準(1993SNA) に基づいており、他国で上方修正された分が反映されていない。
である。2015年版を見たが同じ記述があった。昨年分は見落としていた。昨年の日本生産性本部の茂木会長が変なことを言っているので日本生産性本部の資料からその間違いを指摘する - いろいろやってみるにっきでも、この点も踏まえるべきだった。
引用部分は、他国と比較したときに、他国よりもGDPが少なめで比較をしているということである。
で、GDPの2008SNAだが、この記事が分かりやすい。
そして算出結果がこちら。
とはいえ、労働生産性の国際比較では、
3. GDP新基準に基づく労働生産性の国際比較 <プレスリリース資料(概要)に掲載>
時間当たりの順位がOECD内で1つ上がっているだけである。 1人当たりの労働生産性の順位は変わらず22位である。まだまだGDPが足りない。
もう一度冒頭のNHKの記事に戻る。
「日本生産性本部」が、OECD=経済協力開発機構に加盟する35か国の去年の1時間当たりの労働生産性を分析した結果、日本は20位で、G7=主要7か国の中では最下位となりました。これは、小売りや飲食といったサービス業の分野で業務の効率化が進んでいないことや、長時間労働によって時間当たりの成果が小さいことが影響しているとしています。
ところが、労働生産性の国際比較報告書全文(PDF)では、P5に
日本の労働生産性はこのところ米国の6割強の水準で推移しているが、これは1980年とほぼ同じ水準にあたり、1990年代から続く日米生産性格差の拡大傾向に歯止めがかかるにはいたっていない。1990年に米国の3/4近い水準にあった日本の労働生産性は、2000年代になって7割前後に低下してからも緩やかに差が拡大する状況がこのところ続いている(図5参照)。
2000年以降でみるとイタリアや英国との差はむしろ縮小しており、フランスやカナダとの差もほとんど変わっていないものの、主要先進7カ国で最も労働生産性の高い米国の生産性向上のスピードになかなかついていけない状況にある。
米国コロンビア大学ビジネススクールのヒュー・パトリック教授は、こうした日米間の生産性格差について、日米で働き方にそれほどの差はみられず、生産性格差も実態としては数字ほど大きくない。しかし、両国企業の価格戦略の違いが生産性にも影響しているのではないかと指摘している。小売や飲食、製造業などを中心に日本企業は、1990年代からのデフレに対応して業務効率化をすすめ、利益を削ってでも低価格化を実現することで競争力強化につなげてきたところがある。そうすると、生産性向上を進めることで付加価値を拡大させてきた米国企業とは、労働生産性でも差が生じることになるということである。
うん。NHKの記事にあるようなことは書いていないですね。というか逆ですね。この引用部分から得られる日本の労働生産性の向上策は、GDPを膨らませろ=もっと稼げ/利益を出せ≒値上げしろが答えじゃないかと。NHKは思い込みで書いたのか、日本生産性本部の人が去年の日本生産性本部の会長みたいに、労働生産性の国際比較報告書全文(PDF)に書いていることの逆のことをインタビューかなにかで答えたのか。真相は謎。
まずはデフレを完全に止めるっていうのが必要だろうな。利益を上乗せするために値上げをしたくても、他社との競争の中では自社だけ率先して値上げするのは難しいし。
政府も2020年GDP600兆円を目指す方向で考えているし、
内閣府は8日、国連の最新基準を使って国内総生産(GDP)の計算方法を変更した結果、平成27年度の名目GDP確報値が532兆2千億円になったと発表した。旧基準のGDP速報値から31兆6千億円かさ上げされた。安倍晋三政権が目指す「32年ごろの名目GDP600兆円」へ近づいたが、達成には、引き続き年2~3%の高い成長率が求められる。
人員投下した分は稼げが答えなんだろう。
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労働生産性の件ではまたNHKの記事のような効率厨が沸きそうだけど、いつか図解を書く。「効率ガー」はよく沸くんだけど、間違ったことを効率よくやっても成果には繋がらないんだよ。