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てきとーに生きている奴の日記

古いエントリのサムネイル画像がリンク切れになってたりするけど、チマチマ修正中


裁量労働制について素案を考えてみた。

裁量労働制の検討の元となる厚労省のデータに、異常値があったことで盛り上がっている国会。


今の国会の仕組みではディスカッションは難しく、野党がまともにならないと出てきた法案を修正することが難しい。与党案が全くダメなら否決すればいいんだけど、まあまあであれば修正してよりよくするのが筋。数では負けているわけだし。反対や揚げ足取りやパフォーマンスでプレゼンスを示そうなどという今の野党では望むべくもない。

 

与党案これから提出なので、その前に勝手に素案を考えてみた。このエントリ、トータル4,400文字超えたwちょーながい。

 

まず必要なのが言葉の定義。裁量労働とは何なのか。その他、制度に付随する言葉の定義が必要である。今回ここは省略する。

 

そして規定。裁量労働の対象者としていいのはどのような労働形態、どのような労働者なのか、対象者としてはいけないのはどのような労働形態、どのような労働者なのか。また、付与する裁量はどのようなものなのか、どのように裁量を保護するのか。そして付与されている裁量が侵害された場合、どのように解決するのか。また、裁量労働制を一時停止して働いてもらうケースでは、どのように補償するのか、こういった規定が必要である。

当然、使用者側が違反している場合、どのような罰則を与えるのかという罰則規定も必要である。

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ニュースとかで見て吹いたけど、

「裁量ない」なら裁量労働制の対象者じゃないじゃん。「長時間労働増えるだけ」ってやっぱり裁量無いから裁量労働制の対象者じゃないじゃんw

あと、横断幕の「裁量労働制やめろ」は裁量労働制で問題なく働いている人たちが困るので、そういう思慮の足りない運動はやめたほうがいいと思うよ。そして裁量労働制は必要としているけど、現実問題として働かせ放題な状態に置かれている人を救済しなければ。

 

きちんとした制度にするためのキーポイントを挙げる。

  1. 裁量労働における労働契約
  2. 保障されるべき裁量とは
  3. 裁量を侵害された時の解決方法(社内・社外)
  4. 罰則

  

裁量労働における労働契約

まず、裁量労働制を適用したい使用者側と、裁量労働制の対象者で労働契約を結ぶ必要がある。これは入職時に結んだものを上書きし、裁量労働について規定したものでなければならない。以下、労働者側が裁量労働制を希望する場合も同じ。

裁量の範囲、成果、対価が明確に記述されている必要がある。

 

今回の素案では、その裁量労働における労働契約書に使用者側、労働者個人がそれぞれ電子署名し、タイムスタンプ署名を加えて所轄の労働基準監督署(厚生労働省一括でもいい)に電子申告で提出する形を考えた。なんのためのマイナンバーカードかって話ですよ。

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で、申告された時点では労基署は預かるだけ。紛争発生時に初めて見るような形で、エスクローっぽい供託形態を考えている。これを紙でやると場所を取るし、保管期間の問題も出る。郵送で来たら開封しなければいけないし、窓口を作って受け付けるのも大変。偽造防止のためには印鑑証明書も付けるのかよみたいな話になって、あれこれ面倒である。電子申告なら電子データを保管するだけだし、長期間保管も可能。基本的に文章+電子署名なので数10KB~数100KBの前半。PDF/Aを使ってね。基本的に記載されているべき項目の有無のチェックくらいなら機械学習でできるので、チェックの人手はシステム運用だけに割く。

 

あと、条件が変わるたびに労働契約書を改訂して、双方の電子署名とタイムスタンプ署名を付けて電子申告。なので最長で期ごと、短ければ1か月とかで改訂が入る。

 

で、こうすることで使用者側が一方的に残業代カットの手法として裁量労働制対象者に指名して、対象者の同意を得ていないということは防ぐことができる。同意無しの裁量労働制については厳罰にしておけばいい。労働契約書が第三者(労基署)に常にあるというのは重要。労基署に無ければ発覚時点で厳罰確定。

 

強要したら?それは強要罪に該当しそう。電子署名さえしなければ上記の通り使用者側が厳罰になるし、解雇のほのめかしなどで強要されたなら、証拠を持って労基署へGo。労基署側も調査コストが低くて済む。

裁量労働の強要を受けた者はエビデンスの確保の保証が必要である。文書などの提示は確保しやすいが、問題は口頭。通常は録音できる機器の持ち込みが禁止されている職場であっても、裁量労働の強要のエビデンス確保の場合は、持ち込み不可の規定よりもエビデンス確保手段の実現を優先するという法律上の規定が必要。まあ、労働契約を交わす場所は、「〇〇持ち込み不可」みたいなプロテクトされた場所は不可にすればいい。

 

保障されるべき裁量とは

やはり労働時間帯は裁量対象として保障されるべき。いつ開始して、いつ終了してもいいし、中抜けして労働しない時間帯があってもいい。休みにしたければ一日休みでもいい。

一方で成果については、達成すべき売上なり利益なり制作した成果物なりが定量的に規定されるべき。労働契約書に無いものを後から追加する場合は、やはり労働契約書の結び直しが必要。これで、対象者側が納得できる範囲での追加は可能だけど、納得できないなら追加もできない。当然、作業量が増加するので対価を増やす必要もある。時間をお金で買うという話である。

これにより使用者側には、今いる人員に残業させてなんとかしようとするより、雇用を増やすという選択肢のほうにもインセンティブが動く。

 

あと未達成の場合、たとえば達成率60%未満だったら次期から裁量労働制対象者から外すべきではないか。裁量労働制に指名した使用者側に問題がある。裁量を与えても自己管理できないことは結果として明確である。あくまでも裁量労働制の対象者に選んだ使用者側に問題があるので、労働者に対して未達成だった期の分の補償を求めるとか、懲罰人事をするとか、通常労働に移行時に懲罰的な給与に設定するのは禁止して、このような行為は厳罰対象とすべき。

 

あと事故対応などで、どうしても裁量労働制の対象者の知見が必要な場合も想定要である。双方同意の上、一時的に速やかに通常労働の対象に戻し、残業代を支払う形態に移行するとともに、裁量労働制の場合に実現できていた労働時間帯のシフトの補償を決め、裁量労働の一時停止労働契約書を電子申告する形としておく必要がある。

 

裁量を侵害された時の解決方法(社内・社外)

一般に、指揮命令系統から見ても労働者側の立場が弱い。法令や会社・団体などの規定が上記のようにきちんとしていても、現場の管理職が守られるべき裁量を侵害する可能性は否めない。というか大いにある。たとえば、裁量労働の対象者が朝は子供の送り迎えのため送り迎えを済ませて10時ころに出勤しようと思っているのに、「朝会9:00から出席必須」みたいなルールを決める課長とか、容易に想像できる。

 

まずは社内(・団体内)で、このような裁量の侵害について解決する仕組みが必要である。なんらかの仕組みを持たない場合、相談先は侵害してきた上司の上司ということになるわけだが、同じ部門ということは同じようなマインドの場合もあり、まったく解決に寄与しない可能性がある。法令を背景にした契約事なので、完全にコンプライアンス案件なのだが。あと、上司にさえ言いにくいことは、一般には上司の上司にはさらに言いにくい。なので職制にもとづく解決は最初から考慮しない。

 

まずは、裁量労働の対象者について、裁量の侵害に対するエビデンスの確保の保証が必要である。文書やメールなどで指示された場合はそれほど難しくないが、問題は口頭。通常は録音できる機器の持ち込みが禁止されている職場であっても、裁量の侵害のエビデンス確保の場合は、持ち込み不可の規定よりもエビデンス確保手段の実現を優先するという法律上の規定が必要。

 

次に社内に第三者委員会を設け、対象者からの訴えがあった時点から5営業日以内に侵害内容を精査し、是正を求める。第三者なので、複数他部署の管理職、総務部門あるいは人事部門(どちらかが是正対象の場合があるのでオルタナティブにしておく必要がある)、そして外部の専門家(社会保険労務士司法書士、弁護士など)、組合役員などで構成する。外部の専門家は、組合がある企業の場合は労働組合が指定する。会社・団体側に同等の専門家がいても除外すべきであろう。

 

難しいのはベンチャー中小零細企業の場合。ベンチャー中小零細企業では、労働組合が無い場合が多い。専門家の費用の負担をどうするか。専門家の選定をどうするのか。第三者委員会の組成が難しい企業の場合、いきなり労基署へGoでもいいのではないか。

 

社内の第三者委員会が違反にも関わらず是正勧告を出さなかったり、是正勧告をしても裁量の侵害が止まらない場合など、内部では同じことの繰り返しになるのでエビデンスを持って労基署へGoである。ここで最初のエスクローで供託しておいた労働契約書が役に立つ。労働契約書が労基署の手元にあって改竄不可である。そこにエビデンスが持ち込まれれば調査は容易。是正勧告や罰則に進むことができる。

 

罰則

 大企業と中小零細企業では下される罰則によって痛みが違う。そこで罰則は公告+罰金とする。大企業は公告されるほうが困るし、中小零細企業は罰金が痛い。あとは違反内容の大きさ、頻度、継続性などで公告の期間(数か月から数年、無期限など)を変えたり、罰金の額を決めることになるだろう。

悪質な企業はずーと厚労省のサイトに公告され続けるので、次第に労働者を集めるのが難しくなる。就活サイトは当然データを取り込むだろうし。また悪質な中小零細企業の場合は直接企業の会計内容を毀損する。

 

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まあ、こんな感じでどうですかね。今回書かなかったけどリモートワークの推進も必要である。

 

今でも裁量労働制で問題なく働いている人もいるし、こういう形で迅速に処理できる形にしておけば侵害状態が長期化もしない。「絶対反対~」とかってデモするよりは、こうやって考えたほうが建設的だと思うのだが、いかがだろうか。

 

労働契約書を必要な時にすぐ労基署が手に入れることができるというのは、一定の歯止めにもなるはず。

ブラック労働上等な企業はあれこれ抜け道を探すはずだが、なんなら裁量労働制の採否に関わらず全ての労働者の全ての労働契約書を供託する形にして、テキストマイニングで問題のありそうな労働契約書をピックアップ(↓)するとかもどうだろう。

すぐに使える!会社が得する人事書式&労働契約書

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労基署が動きやすく低コストで調査ができ、労働者保護に動くことができる方法は色々考えることができそう。

Pythonによるテキストマイニング入門

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