たまたま3月に帰省した時に知った、八戸ブックセンターの計画。
上記記者会見引用部分には、「28年度の春には内装等の工事に着手し、平成28年の夏に供用を開始したい」との記述がある。広報誌では「秋オープン予定」になっている。遅れるのは内的要因、外的要因など複数あるのだろが、「秋オープン予定」は市のサイトには存在しない。
秋じゃなかった。やっぱり遅れていた。Webサイトができたのが9月20日。
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トップは参考画像が4点。どの画像もカウンターが半分を占めていて、読書スペースは見あたらない。フロアガイド | 八戸ブックセンターを見ると、グレー部分が書架なんだろうか。ここに一万点か。ハンモックはわかるが読書できるスペースはどこなんだろう。入口は2つ。
Googleストリートビューではビルが建っていない。ビル竣工が遅れたんだろうか。
場所は一応八戸の中心街なのだが、問題は八戸は地方都市の例にたがわず、メインの商業施設は郊外型・ロードサイド型の店舗に移っていて、車中心の社会である。
ブックセンターは市中心部のビル1階に入居し、小さな書店では見かけにくい海外文学や人文・社会科学、芸術などの書籍を扱う。書店での勤務経験があり、市に新規採用されたスタッフが選書し、315平方メートルの売り場に8000~1万点を並べる。店内ではアルコールを含む飲み物も販売。1人掛けの椅子を設置し、くつろいで本と向き合える空間にした。
http://mainichi.jp/articles/20161121/k00/00e/040/159000c#csidx75f621116516ed6a8035f733ae27a84
下北沢あたりのコンセプトを持ってくるあたり、推進している市長は自分が市長をしている市の状況を把握しているとは思えない。飲酒運転推進なのか?
下北沢の町に来る「客」はほとんど公共交通機関で移動する人たち。会社帰りや休みの日に遊びに出たりは電車・バス・徒歩がほとんど。一方、八戸ブックセンター向かいには六日町バス停があるとは言え、統計を見つけられないので正確な比率は分からないが、あの地区に出てくる人たちは下北沢より自家用車比率が高い。
大型書店で検索してみると1,000坪以上でランキングされているのだが、1,000坪は約3,305平方メートル。八戸ブックセンターは315平方メートルで95.3坪。
まずは、売り場面積ごとの書店数を紹介したい。
売場面積 店舗数 店舗占有率 500坪以上 409 3.0 % 499~300坪 949 7.0 % 299~100坪 3,012 22.3 % 99~70坪 1,127 8.3 % 69~40坪 1,662 12.3 % 39~20坪 2,300 17.0 % 19~1坪 2,661 19.7 % 0坪 1,378 10.2 % 合計 13,498 100 %※アルメディア調べ 2012年5月1日
調査は少し古いが、8.3%しかない、あまり作られることが多くない広さということになる。 ここに8,000~1万点である。フロアガイドにあるように、商用ではないスペースも確保した上なので、書架がどのような感じかは行ってみるしかない。血圧が高いので、寒い時期は帰省しないことにしているため、確認できるのは春以降だが実際に行ってみてこようと思う。
問題点は明らか。
八戸市は民業圧迫とならない運営を徹底する。売れないはずの本が売れ行き好調となってしまった場合は取り扱いをやめ、民間に販売を委ねることも検討する。このため市内で“商売敵”となる老舗「木村書店」の田中麗子社長(69)も「新しい需要を掘り起こしてほしい」と歓迎する。
ただ運営を支えるのは市民の税金。内装工事といった初期費用は1億1000万円かかった。人件費など計6000万円の年間運営費に対し、売り上げ目標は約2000万円。差し引き約4000万円の赤字は毎年、市の負担だ。赤字抑制へ本をたくさん売れば、民業圧迫となってしまう矛盾を抱えた運営となる。
今のところ市民から目立った批判はないが、市議会では「同じ予算で図書館を充実させた方がいい」という意見が出た。
「本のまち八戸」を選挙公約に掲げた小林真市長は「文化の薫り高いまちにするために、行政が堂々とやっていく」と力説。年間約4000万円の財政負担は文化への投資か、赤字の垂れ流しか。開店後、市民が判断することになる。
http://mainichi.jp/articles/20161121/k00/00e/040/159000c#csidx151df5af1b5de20bfcb9794b677fcd5
このような事業計画で、推進した市長が退任したらどうなるのか。市の見込みで毎年4,000万円の赤字の計画で、想定よりももっと赤字幅が大きかったら、市長が替わる前にも廃止の可能性もある。そして「文化への投資」というならこの事業のROIが問題である。
PDFで基本計画書が貼られているが、KPIとなる指標もKGIとなる指標も見当たらない。というか具体的な数値目標は全くない。KSFも書かれていないふわっとした書き物である。もちろんミッション | 八戸ブックセンターにも具体的な数値は無い。4,000万円程度の赤字が妥当な投資なのか、ただの無駄遣いなのかの定量的な判断材料が無い。
そして八戸の現状に即したディレクションなのかも怪しい。場所も市の指定の場所にしただけで、市民の行動様式を考慮した立地とは思えない。平日、夕方から集客できるんだろうか?平日日中はイベントや読書会で集客するとしても、仕事帰りの人があそこを徒歩で通ることは少ない場所である。夕方からイベントやってしまうと、広さから想定すると、落ち着いて酒を飲みながら本を読んだり探したりはできなくなる。割と厄介なアンビバレンツである。
小さな書店では見かけにくい海外文学や人文・社会科学、芸術などの書籍を置くと、なぜ「本を読む人」「本を書く人」が増えるんだろう。定性的に見ても、公開されている情報ではこの部分のストーリーが欠けている。
こんな計画、一般の企業ではオーナー社長・会長の道楽以外ほぼ通らない。年間運営費用6,000万円の根拠だって怪しいものだ。賃貸費用、光熱費、イベント予算、委託費まではほぼ予算は正確に積みあがるだろうが、仕入れ等に掛かる費用や人件費を含めて500万円/月として見ると、ほんとかよという感じもする。
ひとまずは、様子を見るしかないんだろうな。