Yahoo!ニュースで流れていたこの記事。
タイトルにもあるようにNEWS ポストセブンからの転載だろう。確かに頻発している。
今、おはよんで交通事故のニュース4つ目なんだが、全部80歳以上。
— 🐶 (@shigeo_t) 2016年11月13日
TVニュースの交通事故関連では高齢者の事故が多い日がある。4つは多過ぎだと思うが。
上の記事からちょっと引用する。
これまでも、ブレーキとアクセルの踏み間違えや高速道路の逆走など、高齢ドライバーが引き起こす“暴走”ぶりは社会問題となっていた。事実、75歳以上のドライバーによる死亡事故は年々増え続け、2014年は全体の12.9%にあたる471件起きている。
交通事故全体としては年々減少傾向だし、死者数も減少傾向である。最新の統計を引用する。オレが小学校に入った昭和45年と対照しているが、1/4に近づきつつある。昭和45年だと交通戦争と言われていたころで、事故そのものが多い。そしてシートベルトやエアバッグはほぼ未装着、ボディの衝突安全性などのパッシブセイフティーはあまり考慮されていなかった頃である。ABS等のアクティブセイフティ関係装備もほぼ無い。つまり、現在よりも事故ったら死んじゃう可能性が高かった。今は搭乗者だけでなく、事故でヒットした人用のエアバッグ(ボンネット等が変形)を装着している車さえあるし、事故を回避するための自動ブレーキ等の運転アシスト機能も出てきている。
元記事に戻る。ちょっと長いし元記事でページをまたがるが引用する。
だが、認知機能の低下ばかりが事故を引き起こす要因になっているわけではない。ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「どんなに運転に自信があり、過去に事故を起こしたことがない人でも、60歳を過ぎれば目に衰えを感じるようになりますし、視野も狭くなる。また、突如飛び出してくる障害物や歩行者を発見してもブレーキを踏む判断が遅れ、ヒヤリとする場面が増えます。
クルマは“走る凶器”であることの怖さをもっと知らしめ、高齢ドライバーには必ず家族などの同乗者をつけるとか、運転技術の衰えに気付かず過信している人には警告を発したり免許返納を勧めたりする政策をもっと強化してもいいと思います」
ネットでは、かつて主流だったMT車(マニュアルトランスミッション=クラッチ操作を自分で行なう)の運転を高齢者に義務づけてはどうか、との意見もあったが、福田氏は「あながち的はずれではない」と指摘する。
「いまは市場がAT(オートマチックトランスミッション)車ばかりなので、高齢者の中にもAT限定の免許しか持っていない人はいるでしょうが、アクセルとブレーキを踏むだけの簡単な動作ゆえに、逆に判断ミスを起こしやすいことは確かです。
一方、MT車はクラッチを踏みながらギアチェンジをしなければなりませんし、いきなりアクセルを踏み過ぎると車がガクガクするノッキングを起こしたり、エンストで止まってしまうこともあります。極論をいえば、MT車を運転できるぐらいの技量がなければ“死ぬまで運転”は無理です」
運転している高齢者は、全員が全員、運転したくて運転しているわけじゃない。実際オレの母親も1940年生まれ、免許返納の話題は自動車保険の更新や車検のたびに出る。保険の手続きをネット通販の保険に切り替えて以降、オレの担当なので毎年免許返納の会話をしている。
で、76歳でまだ運転しているわけだが、自ら免許返納の話題を出すだけあって返納した後の生活についても話題に出る。実家の場所は八戸市の田舎である。地元で住所を言えば、地元民が全員田舎と認定してくれるレベルの田舎である。「そこどこ?」とは聞かれないレベルで、過疎地域ではない。徒歩数分レベルで小学校、中学校、保育園があり、小中は学年複数クラスの模様。でも中心部からは数km離れ、公共交通の便が悪い。
オレたち兄弟は小中と学区外通学をしていた。もともとは自営の店舗2Fに住んでいて、祖母が亡くなったことを契機に現実家のほうに引っ越したので、住所を移さず転校しなかったという方法である。子供の足で徒歩一時間ちょっとの距離である。当時はバス通学でなんとかなるレベルだった。そしてその頃は母も免許を持っていなかった。母の移動はバスか父の送迎でなんとかなった。母が免許を取ったのは1990年代である。バスの本数が減り始め、不便になったためである。実家のそばではまともに買い物できないことも理由である。
母が免許を取得した時、父は車を買い替えたばかりだったのだが、母の「あの車はピュっと出て怖い」とのことで車を買い替えた。買い替え前の車はスプリンターの多分AE110のMT、買い替え後はブルーバードU12のATだった。実家のAE110はオレもちょっと運転する機会があったが、アクセルオンで燃料を大量噴射しているのか、確かにピックアップ良く見せようとしているようで、思ったよりもスタート時のほんの一瞬だけ加速がいい。ファミリーカーなのにそんなチューニングするなんてバカじゃないのと思った。余談が過ぎたが、母の自動車運転人生は自動車学校と車を買い替えるまでのほんの数回、数10kmだけMTで、あとは約25年間ATである。
NEWS ポストセブンの記事は想像力が欠如している。つまり高齢運転者でも、もう長期間MTに触れていないという層が相当数いそうであるということが考慮されていない。母の場合でいえば25年ぶりである。今ATで問題なく運転できていてもMTでは無理だろう。ATならペダルのアクセル・ブレーキの踏みかえだけだが、クラッチ操作、シフトレバー操作が加われば、ステアリング操作、ブレーキ操作がおろそかになる可能性は否めない。いずれの遅れも事故の可能性を上げる。免許的にはMT車に乗ることができるが、相当量の練習が必要で高齢なので身に付くかどうかはわからない。そして、自動運転の本格化が目前に来て、MT義務化は時代に逆行し過ぎである。
でもタイトルの件、いまさら数十年ぶりにMTを操作するなんて無理だろうという話では無い。前置き長過ぎである。元記事から引用する。
「最終的には高齢者の自覚を促すしかありません。地方で足代わりに乗っている人にとっては、免許を返納したら生活が成り立たなくなると訴える人が多いでしょう。そうした人たちには、自家用車に代わる公共交通機関の運賃負担などの救済策が必要です。
しかし、自家用車を維持するだけでも相当な金額がかかりますし、近所のスーパーや病院などを行き来するだけなら、バスやタクシーを使ったほうが安く上がる場合もあります。取り返しのつかない事故を起こすリスクを高めるぐらいなら、きっぱりと年齢を決めて自らクルマを手放す選択肢を持つことも大切です」(福田氏)
またもや想像力の欠如である。いや問題の構造を理解していないんだろう。「高齢者の自覚」?「近所の」?
前振りしたようにバスはどんどん本数減・廃止され、実用に耐えない地域は多い。バスがあてにできないので自家用車などに移行し、ますますバスの利用者が減るというマイナスのスパイラルである。
タクシーは多くの地域で初乗り600円台から700円台。常用するにはちょっと高いかもしれない。それを裏付けるデータはこちら。
過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査(総務省:PDF)
世帯数の多い大きい集落は役場まで短距離、世帯数の少ない集落は遠距離の割合が多いというデータである。
距離が遠ければ迎車料金も多く取られるだろうし、距離が遠ければ料金もかさむ。集落が大きければ公共交通機関もそれなりに利用できる可能性があるが、小さい集落では公共交通機関も使えないし集落で助け合うにしても世帯数が少ない。しかも高齢化で免許を返納?5km未満なら健康なら歩けるが、20km以上は掛かる時間からいっても健康であっても歩く距離ではない。
高齢化のデータも貼っておく。四国、山間地ヤバイである。東北なんて山間地には人が元々住んでいなかったんだろうけど、かつて山間地も栄え今は限界集落化しているような歴史ある地域は問題が大きい。
経済産業省が買物弱者について調査検討している。
買物弱者等に関する報告書(要約抜粋版)(PDF)から引用する。
買物弱者は700万人となっているが、自家用車を持っていると買物弱者の枠からは外れてしまう。免許を返納するということは、買物弱者の仲間入りである。運転免許統計(平成27年版)(PDF)によれば、70歳以上の免許保持者は約237万人である。この年齢層が免許を返納すると、買物弱者は900万人台ということになる。
バスの本数が減ったり、路線廃止されたり、タクシーが実用できない料金設定だったりするとなかなか免許返納に踏み切れない。実家の周りでは市営バスが路線を廃止し民間(南部バス)に委託。かつては市営バスと南部バスの両方が走っていた地域だったが、南部バスだけになり、さらに南部バスだけでも本数減。母は通院の内容に応じてタクシーも利用しているようだが、タクシー料金の計算ができるサイトで計算すると片道3,540円。うわぁという金額である。
タクシーは民間だし、バスも多くは民間。料金設定や路線廃止・本数減は倒産を免れるためには仕方がない。バスが公営だからといっても、赤字垂れ流しは昨今の市町村の収支では難しいだろう。
買物弱者の資料に戻る。公共交通の規制緩和に光明があるという話である。
自家用有償旅客運送、これはこれで一つの解決策だろう。昔風に言えば白タクだが。事例が載っている。
上勝町、地図を見てみると四国の山間部である。やはり総務省の統計通り、厳しい状況なんだろう。タクシー・バスの廃業とは。事故回数0は素晴らしいが、これも高齢化が進むと存続が難しいかもしれない。
バス使え、タクシーを使えと簡単に言える状況ではないことがお分かり頂けるだろう。MT義務化は的外れである。
まあ、買物だけならある程度通販も利用できるわけだが、通院などは通販というわけにはいかない。なんらかの移動手段を要する。
ローカル路線バスの旅でも、路線廃止などはよく出てくる。県境を越えるバスが無かったりもする。生活圏としては同じ地域でも。そして、 コミュニティバスが走っていて蛭子さんが倒れずに番組が成立している。蛭子さん、ほぼ毎回「これじゃバスの旅じゃなくて徒歩の旅だよ~」とこぼしているw
民間のバス・タクシー業者が倒れる前に、コミュニティバスや乗合タクシーを充実させたり、それが維持できない状況の場合は、上述のように自家用有償旅客運送も必要かもしれない。
ついカッとなって長々書いてしまったが、まだ書き残しがある。でも長くなったので別の機会にでも。