朝食のもりそばを食いながら下記のブログを読んで、『「裏」のリーダーと「表」のリーダー』は面白い観点だと思ったけど、リーダーとマネージャーは別だよねという感想を持ったのでちょっと書いてみたい。なお、本エントリに蕎麦は関係ない。
まず、上記エントリの内容に触れる前に組織の話。組織には2タイプあって、組織の構成員や組織の長の頑張りで大きくなれる組織と、頑張っても大きさが変わらない組織がある。
前者は一般企業のプロフィットセンターなどが該当する。後者は多くの公的機関や企業内でも管理部門やコストセンターなどが該当する。見に行けるところで例示すると、市町村役場の窓口業務の部門などがそれにあたる。この部門の構成員や部門の長がいくら頑張っても、人数は勝手に増やせないし、役職者も簡単には増やせない。こういう組織は外的要因では大きくなる。例えばニュータウンを作った後、ニュータウンに人口が増えてくると支所が必要になる。また、何かの条例や法律によって業務量が増えれば担当者は増やせるかもしれない。
一方、企業のプロフィットセンターは多くの場合、組織の長や構成員の頑張りによって組織を大きくできる。今回はこちらの組織で考えたい。オレは企業では大きくできる組織にしか所属したことがないもんで。
まずなんらかのサービス事業を行っている企業があるとして、この企業はインダストリー別に部があるとする。例では1つの部に2つの課、一つの係で2社程度を相手にしている組織があるとする。部トータルで47社の顧客がいる。
これが、組織の頑張りによって、3年くらいの間に顧客企業を倍近く増やし、受注・売上・利益が増え組織が大きくなったとする。
このように、大きくなれる組織の場合、外から役職者が来る場合もあるが、内部昇格もある。
ここで、「裏」のリーダーは「表」のリーダーになれない。魅力的な社員の見極め方 - らいおんごろしはかく語りきから引用してみる。
役職者ともなれば、次のリーダーを育てなくてはなりません。
周りを見渡して、リーダーの資質がある社員を見極めようとした場合、まず目に留まるのは、このような社員です。
- そつなく仕事をこなす。(本気になればもっと仕事をこなしそう)
- 他の職員をある程度まとめている。(現場の意見を吸い上げてくれそう)
- 上司に対して控えめに接する。(こちらの考えを吸収してくれそう)
- やや積極性に欠ける。(成功体験を積ませれば、積極性が芽生えそう)
仕事はこなせるし、ある程度の人望もある。
上司に対しては控えめで、伸びしろもたっぷりある。
これって、上司から見たら一番美味しそうな部下です。
ポテンシャルを秘めていて、ものすごく魅力的に映ります。
次のリーダーに持って来いの存在です。
しかし、魅力的に映るからこそ注意が必要です。
あなたが見ているのは、「裏」でしょうか「表」でしょうか。
全然魅力的に思えないんですけど。特に『やや積極性に欠ける。』は評価しようがない。自分の傀儡、自分のコピーを作りたいなら魅力的かもしれないけど、組織を大きくしようと思ったら使えない。そもそも部下に自分のコピーであることを求めるタイプの役職者は、部下を潰しかねない。引用のような候補者が魅力的なのは、大きくならない(できない)組織なんですかね。大きくできない組織の場合、どうしても内向きの力が強い。一度就いたポジションを守る方向の行動も多くなりそう。
あと、「仕事」「業務」と書いてしまうと分解能が低くて話が噛みあわないかも。WorkなのかTaskなのか、Businessなのか。「業務」だとBusinessは外れるけど。
さて、もう一つ。タイトルの件。リーダーとマネージャーは別だよねって話。役職者に引き上げようという時、緑の第1象限のようにマネジメント能力もあってリーダーシップもある人間だと最適ではある。しかし、そんなに簡単な話は無い。
なおこの図は、仕事ができるかできないかは示していない。
ビジネス書のジャンルを見ると分かるように、リーダシップでジャンル構成しているし、マネジメントでもジャンルを構成している。適当に選んでみた。
適当にはてなブログのAmazon商品紹介で”リーダシップ”、”マネジメント”と検索窓に入れて上位からピックアップしたわけだが、ご覧の通り。マネジメントはドラッカーがヒットした。マネジメントについては体系付けられていて、ある程度教科書的に学ぶことができ、身に付けることができる。 一方のリーダーシップは難しい。その時の状況や構成員、外的要因などで発揮すべきリーダーシップが異なる。例えば、規律正しい統制のとれた組織のリーダーなら下記の本などが向いているだろう。

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しかし、組織の形態はそれぞれまちまち別々である。優れたリーダーの事例を学んでも、自分に置き換えて適用できないかもしれない。
そして、役職のポジションによっても話は変わる。マネジメント能力重視なのかリーダーシップ重視なのか。結局パーフェクト超人はそうはいない、というかなんですでに引き上げられていないんだろうという話であり、ポテンシャルと適正を見ながら引き上げていくしかない。
その時に平均的に足りない人を選ぶか、リーダーシップはあるけどマネジメント能力不足の人を選ぶのか、マネジメント能力が高い人のリーダーシップ性を伸ばすのか、候補が複数いる場合、選択が難しい。マネジメント能力かリーダーシップが高ければ、補佐付けるからそのままでもいいというケースもあるし。
で、「裏」のリーダーは「表」のリーダーになれない。魅力的な社員の見極め方 - らいおんごろしはかく語りきは本当にリーダーを必要としていたのだろうか。エピソード①から引用する。
「裏」を牛耳っているAという社員がいます。
自分の成長や組織の成長に興味がなく、上司や組織の悪口を振りまきます。
上司や組織の悪口ならまだしも、同僚や部下の悪口も振りまくからタチが悪いです。
Aは、仕事はキッチリこなします。
周囲の社員はAに目をつけられたくないので、慕っているフリをします。
「裏」では上司のことをボロクソに言っていますが、「表」では控えめに接します。
これが、人によっては「リーダーの資質」に見えるのでしょう。
(中略)
ある時、Aに提案しました。
「自分たちが思っているように業務を改善して欲しい」
ここが、Aの踏ん張りどころです。
A自身もそれを自覚していました。
「裏」から出てきて、初めて「表」でリーダーシップを発揮しようとしました。
しかし、そのやり方は「表」のリーダーがいつもやっているような方法でした。
つまり、自分が「裏」側でいつも批判の対象にしている方法を、そっくりそのまま実施したのです。
それでも結果がついてきたら良かったのですが、結局企画倒れで終わりました。
普段自分が全否定しているやり方を100%踏襲している自覚もなく、尚且つ失敗したことを失敗と捉えず、無理にやらされたということにして、しばらくは「自分」を保とうとしていたそうです。
違和感があるのだが、確かに業務改善にはリーダーシップは必要。ただし、リーダーシップがあっても、結果に対してプロセスをマネジメント(日本語になってないw)していく必要がある。「結果にコミット」のらいざっぷじゃないけど。リーダーシップだけでは求める結果は作り出せない。自分で書いていて日本語になっていなくて笑ったが、結局日本語になっていないということは、日本の文化に根付いていないものなのかもと思った。このエピソードでいえば、マネジメント能力もそこそこ必要だったはず。
オレの考えだが、役職者に引き上げるためのポイントはエンパワーメント(権限委譲)かなと思う。例えば課長になってすぐには無理な話だが、課長になって数年経つのに課長の仕事しかできない、あるいは主任や担当のタスクを好んでやっているようでは、部長に引き上げようがない。組織を大きくするタイプの部長なら、自分は上を狙うわけで下を育てたい。それには、部下の課長に自分の代わりを少しずつさせ、部長の仕事ができることを見極めて部長に推薦する。部長の仕事の中にはワークやタスクもあるがリーダーシップもマネジメントもある。「あいつよさそう」「あいつはダメ」とかぼんやり見ていたら、自分のポジションを明け渡せる人材なんて育っていただけない。
偉くなった元上司たちを見ても、どんどん上司の仕事をさせてもらったし、課長になったら部長の仕事をやろうとしてたし、部長になったら本部長の仕事をやろうとしてた。
というわけで、「裏」のリーダーは「表」のリーダーになれない。魅力的な社員の見極め方 - らいおんごろしはかく語りきについては否定はしないが、オレの経験と違って大きくならない(できない)組織の人なのかなという感じ。ゼロサムゲームの中で育っていないもんで、「裏」のリーダーは「表」のリーダーになれない。魅力的な社員の見極め方 - らいおんごろしはかく語りきで出てくる「魅力的な社員」には魅力を感じない。