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てきとーに生きている奴の日記

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各携帯電話キャリアが横並びで音声(通話)定額を出している理由が分からない人がいるようなので解説しておく

暑さになれたかも(挨拶)。

 

昨日はauの回線契約を変な名前(カケホとデジラ)の新しいプランに変更すると安くなりそうだ を書いたわけだが、みんな分かっているだろうということで特に触れなかった音声(通話)定額の話を書いておく。以下、音声(通話)定額だと長いので音声定額で。

 

本エントリを書く理由は「なんで音声定額なんだよ。ケータイキャリアは分かってない」「みんな携帯電話・スマートフォンを持っていても、音声通話しているわけじゃなくてデータ通信している」「ソーシャルゲームのためにデータ通信している」「ソーシャルゲーム用のプランを出せば飛びつくのに」 みたいなツイートを見たから。オレからすると「おいおい、ITエンジニア名乗っているのに大丈夫かよ」である。IT系以外の人が分からないのは別に問題じゃないし、興味がなくても自分の使い方に合わせて料金さえ安くなればいいんだし。でもねえ……ITエンジニアねえ……

 

3大キャリアが横並びで音声定額、データ量上限付データ通信定額プランを出してきている。ほぼ横並びのようなので、細かく見比べるのは他の人におまかせしたい。

 

問題はなぜこのタイミングで音声定額なのか。

年度事業データ | 企業情報 | NTTドコモが分かりやすいが、音声のARPU*1はどんどん下がっている。実績ベースで2010年3月の音声ARPUは2,900円/月・契約だったのに、2014年3月は1,370円/月・契約である。たった4年で半分を切っているほどの右肩下がりである。

4年で半分以下に下がっているのに、音声部分を定額にするのは変だと思う人もいるだろう。逆に「なるほど、だから定額かあ」と思う人もいるだろう。

 

実はこのタイミングでの音声定額化は、各キャリアの設備投資・運用費用の問題である。

現在は4Gと呼ばれるようになった元3.9GのLTEが実用になるレベルになりつつある。充足具合は人口密集の度合いによるので、過疎地はこれからのところもあると思うが、どんどんLTE化を進めていくことは間違いない。

実はLTEには回線交換の仕組みが無い。   と書いても普通の人にはわからないのできちんと説明する。携帯電話はその発祥のときから色々と進化してきているが、いまなお変わっていないのは音声通話部分は回線交換の仕組みで成り立っている点。

固定電話の音声通話はやはり回線交換方式である。こちらのほうも回線交換網の維持が負担になってきたことと、IP網で十分な帯域が得られるようになったので、回線交換(PSTN網)を廃止して行こうという動きになっている。

(PDF注意) 電話網からIP網への円滑な移行に関する 取組状況 ─総務省

徐々にPSTN網からIP網にサービスを移していき、2025年には完全に廃止する目標設定になっている。

 

これと同じ動きが携帯電話キャリアの場合はもっと急激に進む。多分目標は2020年くらい。東京オリンピックあるし。

その理由はLTE網が拡充できたあとは3G網を廃止したいため。LTEには回線交換の仕組みが無いと上で書いたが、そのため現在はLTEが整備できているエリアであっても音声通話は3Gに切り替えて動くように端末側ができている。

 

携帯電話キャリアにとっては、今後3G網はただの金食い虫に変わっていく。なぜか?

音声ARPUが下がっている話を出したが、LTEが拡充できてLTEでデータ通信がまかなえるようになると、ARPUが下がっている音声のためだけに3G網を維持することになる。そうなると3G網を廃止したくなるのは当然。そこでVoLTEである。VoLTEはVoice over LTEの略で音声通信をパケット交換(IP網)で実現する。言い換えると音声のやりとりである電話をLTE上のデータ通信に置き換えて実現する。回線交換は不要となるのでLTE網だけで電話を実現できる。

 

VoLTEだけにできれば3G網は破棄することができる。これはインフラ面のコストを考えると非常に大きい。3G網は、新規に増やさなくても維持しようとすれば費用が掛かるし、3G用の電波も占有したまま。大金を使って拡充してきた3G網ではあるが、LTEが拡充できた暁には、3G網を無くすことができれば携帯電話キャリアにとっては良いことのほうが圧倒的。

 

そのときに、もっと下がっているはずの音声ARPU。どうせ音声に大金を使う顧客は僅少なので、定額制にしたほうが儲かる。いや、現時点でもほぼトントンか定額のほうが儲かるという算盤をはじいたと思われる。携帯電話キャリアも儲けるために必死に頭を使っているし、その結果がこのタイミングでの音声定額化と考えるのが正しいだろう。

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そして音声ARPU分がどこに行ったのか?みんな話さなくなったのか?

多分、ソーシャルメディアにコミュニケーションの一部が移ったんだろう。音声そのものではなく別のコミュニケーション手段という形で。音声の場合、同じ時間を共有する必要があるわけだが、全てのコミュニケーションで同じ時間を共有する必要はない。ソーシャルメディアは音声を含めてデータ通信なので、一部のコミュニケーションがソーシャルメディアに移れば音声ARPUは下がる。

ソーシャルメディアなどでデータ通信を使うようになれば、ますますデータ通信が増えていく。LTEやその後継は、より高速になって増加するデータ通信を捌くことになる。音声部分もVoLTEにしてデータ通信化すると、一時的にはLTE網の負荷とはなる。しかし、3G網で使用していた電波をLTE網に転換できれば、帯域を増やすことができる。

 

といったところまで書けばわかるでしょうか。

 

なお、下の本をKindleで読んだけど、ちょっとはしょっているけど素人にもわかるレベルで書かれている。入門書としてはお勧め。

「電話」の仕組み ?回線交換からLINEまで?

「電話」の仕組み ?回線交換からLINEまで?

 

 いやさ、こないだハンドルぐるぐる回すタイプの電話機のところから(というか文明堂の「電話は2番」から)回線交換方式の説明したんだけど、平成生まれだとほぼ確実に現役で動いているところを見たことないよね、ハンドルぐるぐる回すタイプの電話機。昭和生まれでもあまり知らないと思うけど。

*1:1契約あたりの売上

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