なんか日経新聞を見るとやたらと「生産性」って書いてある。「生産性考」という特集まである。他にも生産性関係の記事があるのだが、そっちはまた別途。
オレが見た時点で記事は3本。
どれを読んでも何を言いたいのかわからない記事である。なんか色々切り貼り継ぎはぎして書いてみましたって感じ。
直近の永守会長の記事では労働生産性成長上昇率を使っている。
そしてこれ、このグラフって「労働生産性上昇率」ですからね。上にキャプションで「高度経済成長期の終了後、労働生産性は低下傾向が続く」(太字はオレ)って書いてある。上昇率にマイナスが無いのに、いつ労働生産性が低下したんでしょうか。
そこで原典である日本生産性本部の資料に当たってみる。詳細版は使いにくいのでヒットしたやつで。PDFなのでそのままキャプチャ。
http://www.jpc-net.jp/jamp/data/JAMP02.pdf
こっちはこっちでなんてことするんだという感じ。上のグラフは名目労働生産性で下のグラフは実質労働生産性である。揃えろよw
上の棒グラフは名目労働生産性の推移で、確かに凹んでいる年はある。でもこの資料での最新年である2015年は上がっている。労働生産性についていえば低下傾向続いていないじゃないか。下の折れ線グラフにあるように、実質労働生産性上昇率では就業者1人あたりでマイナスだった期間はあるが、上昇率についても少し回復している。こちらも低下傾向が続くとは言えない。低迷はしているが。
同じ数字を見たはずなのに何を言っているのかわからない。というか、日本生産性本部の資料では労働生産性上昇率は折れ線グラフで、率だから変化を見たいので折れ線なのは当然なのだが、日経の方は棒グラフになっている。わざわざ書き直したということなんだろうけど、労働生産性と労働生産性上昇率を混同している疑いもあるし、そもそも数字の扱い方も分かっていないんじゃないか、この記事書いた人。
こんなことを書きたいんじゃなかった。つい突っ込んでしまった。前置き長すぎ(ありがち)。
例えば『「賃上げ倒産」の現場から 企業の存亡握る生産性 :日本経済新聞』では、こんな締め。
中小企業を中心に、激しい価格競争が続き、売り上げは伸び悩む。「賃上げ倒産」を防ぐためには、生産性向上がカギを握る。
途中にはこんな記述も。
人件費の上昇を受け、外食業界は値上げが相次いでいる。一方、ステークスは「半額クーポンの出し過ぎで売り上げを確保できなかった」(関係 者)。売り上げが伸びずに、人件費の上昇に見合った生産性向上が進まなかったことが致命傷となった。
『売り上げが伸びずに、人件費の上昇に見合った生産性向上が進まなかった』である。書いてて分からなかったんだろうか。労働市場は売り手市場になっているので、賃上げしないと労働者を確保しにくくなっている。でも原因は『売上が伸びずに』である。そもそも半額クーポン出さなければ集客できない時点で、労働生産性の問題以外にももっと大きな問題がある。売上不足である。人手不足倒産に無理に当てはめるストーリーが先にあって、人手不足倒産は労働生産性のせいと思っているんだろう。本当の人手不足倒産は本当に労働者を確保できずに商品・サービスを提供できなくなって倒産というケースだろう。ステークスの件は、半額クーポン出し過ぎで売上が低下傾向なのに人件費が高騰という話であって、人手不足だから倒産ではない。半額クーポンの出し過ぎは、商品に魅力が無いからなのか、単に判断ミス(惰性で半額クーポン出し続けたとか)なのかはよくわからないけど、いずれにせよ人手不足を除いた経営の問題である。
2回目の『成長か衰退か 人手不足を飛躍のバネに :日本経済新聞』ではこんなグラフを使っている。上のグラフのバブル期を見て何も思わなかったんだろうか?日本の労働生産性が低いのは産業構造のせいもあるし、バブル期のようにガンガン値上げできれば改善する。
このブログでは何度も書いているように、労働生産性の算出式は以下の通り。
簡単に言えば、労働生産性が高い=就業者数に対してGDPが大きい、あるいは労働生産性が高い=GDPに対して就業者数が少ない。労働生産性が低い=就業者数に対してGDPが少ない、労働生産性が低い=GDPに対して就業者数が多いである。単純な割り算。日本の労働生産性が低いのは、GDPに対して就業者数が多いからである。GDPはご存知の通り、世界で3位。
このツイートで日経の連載を知ったのだが、読後オレも同じ感想。
日経が生産性ばっか語るシリーズやりはじめたんだけど、生産性って付加価値をコストで割るんだろうけど、なんで値上げの選択肢が無いんですかね?分母をちっちゃくする話ばっか。( ´・ω・` )
— 僻地課長 (@bubu0404) 2017年11月26日
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デフレ脳で労働生産性を語ると、そもそもの算出式を顧みずに効率化とかそういう方向に行きそう。必要十分な値上げをして労働者に還元しろよ。