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生産性の向上→「効率化」と叫んでいるは誰か

2回前の記事だが、ブックマークで回ってきたのが一昨日だったので今さら書いてみる。このエントリは5,028文字ある。

リード文はこれ。

「欧米に比べて、日本企業の生産性は低い」といった話をよく聞くようになった。効率化を図っている企業は多いのに、なぜ生産性は上がらないのか。その背景に、結局のところ「人のがんばり」に頼っている部分があるからではないだろうか。

 

1ページ目から2ページ目に遷移するときのタイトルが『「効率化」の必要を叫べば叫ぶほど弱者が倒れる』である。

 

ここから効率化について書くのであれば、例えばサウスウエスト航空の例を引いて書くこともできる。やるべき効率化、やるべきではない効率化という観点である。

ただ、サウスウエスト航空のビジネスモデルや経営理念などについてご存知の方にはすぐに話は通じるが、ビジネスモデルや経営理念などから説明をしていくと、本一冊掛かる。

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡

 
Gemini 1/200 B737-800 (S) サウスウエスト航空 n/c N8662F

Gemini 1/200 B737-800 (S) サウスウエスト航空 n/c N8662F

 

通常の航空会社がハブ・アンド・スポークなのにサウスウエスト航空はポイント・トゥ・ポイントであるとか、機体はB737だけとか、顧客第二主義とか、人件費削減以外の方法でのコスト削減とか。なかなか面白いのだが、本題に入る前の説明が長くなり過ぎる。

 

というわけで、今回はもっとプリミティブなところに目を向ける。タイトルに書いた通り『生産性の向上→「効率化」と叫んでいるは誰か』である。

 

それを象徴するのが、国の生産性をあらわす「1人当たりGDP」だ。2015年の日本は「1人当たりGDP」は世界で第27位だった。そこでさまざまな有識者から、「少子高齢化の中で成長をしていくのは生産性を上げるべきだ」という提言が出た。日本政府も重要性を説くので報道もたくさん出た。

 にもかかわらず、IMFが最近発表した2016年のデータでは、さらに下がって第30位に落ち込んでいる。頑張れば頑張るほど裏目に出ているのだ。

日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由 (2/5) - ITmedia ビジネスオンライン

本当に裏目に出ているのだろうか。

Workers

 

このブログでは何度も書いている通り、統計情報として出てくる「労働生産性」について、算出式を確かめることもなく「オレの考えた労働生産性」「わたしの考えた労働生産性」という文が多過ぎる。それこそオレオレ統計では、世の中に出ている労働生産性に関する文の90%以上が「オレの考えた労働生産性」「わたしの考えた労働生産性」である。

 

毎年年末に労働生産性について日本生産性本部から出てくる。そして日本生産性本部の会長でさえ労働生産性の式を理解していない。日本生産性本部が出しているドキュメントでは、労働生産性の定義に従って算出しているのにである。


式は極めて単純な割り算である。

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shigeo-t/20151220/20151220161016.png

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shigeo-t/20161220/20161220035031.png

 

 簡単に言えば、労働生産性が高い=就業者数に対してGDPが大きい、あるいは労働生産性が高い=GDPに対して就業者数が少ない。労働生産性が低い=就業者数に対してGDPが少ない、労働生産性が低い=GDPに対して就業者数が多いである。

 

就業者数は細かい定義はあるものの、まあ字義通りなので措いておくとして、問題はGDPである。

 

GDPは日本の場合は内閣府で算出する。最終的に出てくる数字の詳細の算出式は非公開であるが、作成方法は下記のページにPDFで提示されている。

  統計の作成方法 - 内閣府

このページ統計の作成方法 - 内閣府の上部には

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 統計の作成方法

とある。

 

内閣府の算出式は国民経済計算推計手法解説書(四半期別GDP速報(QE)編)平成23年基準版(平成28年11月25日)(PDF形式:858KB)にあるが、その36枚目にはこの式が提示されている。

f:id:shigeo-t:20170329031125p:plain

これだと手前の35枚を読まないとわかりにくいので、Wikipediaから。

経済モデルとGDPの定義[編集]

GDPを定義するために、実際の経済を単純化したモデルを与える[3] 。なお、ここで説明するGDP名目GDPと呼ばれるもので、後述の実質GDPとは異なる。

国内には家計企業政府の三種類の経済部門があり、それとは別に外国という経済部門がある。

また財・サービスの市場要素市場金融市場の三種類の市場がある。

企業が自身の(中間ないし最終)財・サービスを作るために別の企業から買い取る財・サービスを中間財・サービスといい、それ以外の財・サービスを最終財・サービスという。

財・サービスの市場は企業および外国が自身の最終財・サービスを売るための市場で、各経済部門はこの市場から財・サービスを買い取る。

一定期間に家計、企業、政府、および外国が財・サービス市場から最終財・サービスを買い取ったときに支払った金額をそれぞれ消費支出投資支出政府支出輸入という。

また、一定期間に企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金の総額を国内総生産GDPと呼び、外国が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として金を得ることを輸出と呼ぶ。

以上の定義でわかるように、国内総生産には企業が中間財・サービスを売ることで得た金は含まれない。中間財・サービスは、別の(中間ないし最終)財・サービスを作るための要素として使われるので、「二重カウント」を避けるため、中間財・サービスを含まない。

要素市場および金融市場はGDPを定義する際直接的には使用しないが、モデルの全体像を捕らえ易くするため、説明する。要素市場は企業が労働、土地、資本(=機械や建物)、および人的資本といった生産要素を家計から購入するための市場で、生産要素に対する対価として賃金、利潤、利子、賃貸料などの形で企業から家計に金が流れ込む。

最後に金融市場は銀行取引、株式市場、および債券市場などの総称で、金融市場には家計から民間貯蓄が流れ込み、外国からは外国貸付株式購入により金が流れ込む。

企業は企業による借入株式発行により、金融市場から資金を調達し、政府は政府借入により金融市場から資金を調達する。 そして外国は外国借入株式売却により金融市場から資金を調達する。

国内総生産 - Wikipedia

 

引用が少し長くなったが、ポイントを抜き出すと下記の通り。

一定期間に企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金の総額を国内総生産GDPと呼び、

国内総生産 - Wikipedia

 

 

生産性の式に戻って考えると、日本の場合は就業者数に対してGDPが足りないため労働生産性が低い。となると、就業者数を減らすかGDPを増やすかである。

就業者数については有効求人倍率という経済指標があり、労働意欲がある人に職が無いということは不況ということになる。そのため就業者数を減らすという手は取りにくいということになる。

 

ではGDPをどう増やすか。上記に短く引用したように、『一定期間に企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金の総額を国内総生産GDPと呼び、』なので、対価を増やせばGDPも増える。

 

ここでタイトルに戻って、労働生産性向上→「効率化」と叫んでいるのは誰か  である。労働生産性を上げる方法は、

  効率化 = 目指すところ=(就業者×労働時間のどちらかの削減)

という方法もあるが、対価を増やすことでも労働生産性は向上する。

 

プライシング(値決め)は経営の根幹の一つである。

ノークス氏は、プライシングの効果をこう説明します。1ドル高く価格に上乗せすることができれば、それはそのままマージンの源泉になる。ところが、仮にサプライチェーンを改善して変動費を1%抑制しても、あるいは固定費を1%削減しても、販売数量を1%増加させたとしても、価格を1%改善(上乗せ)する効果には及ばない。つまり、プライシングこそが収益力を向上させる強力な梃子(てこ)である、と。

今回のエントリで言いたいことはこの文に集約されている。  

 

元々このエントリを書くきっかけである日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由 (1/5) - ITmedia ビジネスオンラインにしても、最初から生産性を向上するためには効率化という思い込みから話がスタートしている。

 

しかし実際には、提供している財・サービス内容と、得ている対価がつり合っていない、不適切に安く提供していることが問題というケースも多いのではないか。視点が違うと言ってもいい。

 

ビジネスを成立させるための構成要素のうち、「販売」という行為は大きな比率を占める。卑近な例だと、スーパーマーケットのレジ。セルフレジも増えてきたが、まだ全てのレジをセルフレジというスーパーは見掛けない。スーパー側のレジに掛かるコストが

  「非セルフレジ(レジ要員によるレジ)」>「セルフレジ」

なら、思い切って非セルフレジを有料化するという手はある。すでにレジ袋有料化に成功し、それが常識となっている地域もある。

 

「IT化の恩恵が~」、「効率が~」という前に、対価を増やすという視点で経営している企業はどれだけあるのか?

提供している財・サービスと得ている対価のつり合いという観点では、スーパーの例なら非セルフレジの有料化で、セルフレジよりも手厚いサービスにプライシングすることで対価を増やすことができる。

 

他企業・他産業でも同じである。これまでの慣例で特に値段を付けずに提供している財やサービスについて見直しを行い、対価を請求すべき項目には対価を請求していく経営も生産性向上に寄与する。日本全体で言えばGDPも向上する。

 

逆に、そのようにプライシングした結果、その部分は誰も買わなくなるとする。これもこれで生産性の向上に寄与する。なにしろ、今までタダ働きしていた作業がバッサリ無くなるわけで、細かく効率化を考えるよりもそれこそ効率よく効率化が図れる。頑張って5%効率化するよりも、やらないことを20%作ってカットする方が効率が良いのは、小学校の算数レベルで理解できるはず。

プライシング戦略-利益最大化のための指針

プライシング戦略-利益最大化のための指針

 

 

これは話としては単純で分かりやすいが、実行するためには経営力が必要である。

 

例えばデキの悪いB2Bの営業担当は、社内(製造部門等)に対して値引き要請交渉をして、安く売ることが仕事だと勘違いしていたりする。確かに、顧客から見て安く提供されることは望ましいことであり、安くしたほうが営業担当としても交渉しやすく、他社に勝つ可能性も高まる。同業他社も同じような営業スタイルなら、合成の誤謬で市場そのものが廉価販売競争に傾く。システムインテグレーション業界(SI業界)は、まさにこのパターンに嵌っている。

 

しかし、そのことによって、正当な対価を得ることが難しくなる。正当な対価が無いということは、就業者に対してGDPが低いということであり、労働生産性が低いということである。

 

そういう意味では、日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由 (1/5) - ITmedia ビジネスオンラインの提起した問題の一つである、「人のがんばり」については首肯できる。経営者が演繹的に考察したりプライシングを考えたりすることなく目先の「効率化」に走った、あるいは現場から帰納的に考え出てきた「効率化」に経営者がフリーライドしている。

 

生産性の向上→「効率化」という認知バイアスから脱却しないと、日本の生産性は向上しないと考える。