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てきとーに生きている奴の日記

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日本生産性本部の茂木会長が変なことを言っているので日本生産性本部の資料からその間違いを指摘する

残念なのは誰か。

日本生産性本部茂木友三郎会長(キッコーマン名誉会長)は18日、東京都内で会見し、2014年度の物価変動の影響を除いた実質の労働生産性が、前年度比1・6%減となったと発表した。減少は09年度以来5年ぶり。

(中略)

また、経済協力開発機構(OECD)加盟国で比較すると、34カ国中21位。この順位は05年から続き、主要先進7カ国としては最も低い状況だ。茂木会長は、「日本は勤勉な国で、生産性が高いはずと考えられるが、残念な結果だ」と評価した。

『「日本は勤勉な国で、生産性が高いはずと考えられるが、』とか、何言ってるでしょうか。

 

まずはデータから。残念ながらまだ2015年版の国際比較は無いので、2014年版にて説明する。

(2014年版PDF)http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2014.pdf

ドキュメントのP29(PDFではP31目)から。

2014年に減少したと上記の記事引用にあるが、いつだって日本は先進7か国中最下位、OECD加盟国34か国でも22位と低位である。グラフを見て分かる通り、OECD平均を下回っている。

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前年と比較してどうのこうのという状況ではないことは、主要先進7ヵ国の順位の変遷を見ればわかる。

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PDF内の順番は逆になるが、表3-1を見ると1位はずっとルクセンブルクである。日本は1990年(バブル期だ!)の13位が最高で、ずっと低位である。

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さて本題。労働生産性は、下記の式である。

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 GDPを就業者数で割ると労働生産性が出る。ということは、GDPに対して就業者数が少ないか、就業者数に対してGDPが大きいければよいということになる。

ルクセンブルクが1位なのは、本文中にもあるように、

労働生産性が最も高かったのは、ルクセンブルク(127,930ドル/1,323万円)であった。ルクセンブルクは鉄鋼業のほか、ヨーロッパでも有数の金融センターがあることで知られ、GDPの半分近くが金融業や不動産業、鉄鋼業などによって生み出されている

という産業構造である。ルクセンブルクの場合は、『GDPに対して就業者数が少ない』タイプである。OECD加盟国内の小国で上位に来るタイプは大体このパターンである。言い換えれば少人数で稼げるタイプである。

一方、ドイツや米国などは『就業者数に対してGDPが大きい』タイプである。

 

詳しくは、 http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2014.pdf を読んでいただければわかるが、労働生産性は勤勉かどうかなんて全く関係ないということである。もう一度産経の記事を引用する。

茂木会長は、「日本は勤勉な国で、生産性が高いはずと考えられるが、残念な結果だ」と評価した。

 (労働生産性、先進7カ国で最低 茂木友三郎生産性本部会長「勤勉な日本が…残念な結果」(1/2ページ) - 産経ニュース)

いや、茂木日本生産性本部会長は何を言っているんでしょうか。日本は産業構造的に、元々高度成長期もバブル期も労働生産性は低いんだって。バブル期でさえ低い。日本生産性本部会長が日本生産性本部の仕事内容を把握していないのに記者会見するとか、それこそ残念なんじゃないかと思う。

 

で、労働生産性低いなら、産業構造変えるしかないって議論にならないのは謎。
さらに、「これから労働者不足だから、移民が必要」みたいな話になってるけど、日本にいる人だけでGDPを稼げる構造にすれば労働生産性は上がる。

全て「人が働く」前提だから、労働者不足に対して移民を入れて労働力を補いたいということだろう。しかし近年せっかくAIやロボットが発達してきているのにそれを使わない手は無いし、人手が必要な産業から少人数で成立する産業に移行するという手もある。少子高齢化を踏まえ、移民について考える前に、働き方や産業構造について考えてみるべきではないのか。

 

別のところにも一応突っ込んでおく。もう一度 http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2014.pdf から。

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付表10でわかるように、足を引っ張っているのは「電気ガス」「卸小売」「金融不動産」。サービス業の労働生産性のトレンドは、日本は先進7ヵ国中で見るとそんなに悪くない。付表10でもトレンドがわかる。

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で、このブログ。

まさに、サービス業の生産性というのが何で決まってくるのかをしっかりと考えてこそ、その「改善」も可能になろうというものです。

全産業が対象なら別に突っ込むほどのことも無いんだけど、サービス業名指しなもので。

リーマンショック後で見ればそんなに悪くないんですけど。バブル期からは-0.4%で落ちてるけど。結局、人数当たりで稼ぎ出すGDPに依存するわけで、『勤勉にサービスしすぎる』というのは印象に過ぎないのでは?

で、卸小売飲食の労働生産性のトレンドは一応全体的には右肩上がりだが、グラフでは最新の日本は最下位。

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まさか、「サービス」って言いながら「飲食」のことを語っているということはないだろうね。 付表10ではサービスに飲食が含まれてて、2005年を1として、全ての年で1以上=(数字が悪い飲食をサービス側に入れても1以上)なんだが。

データを正しく見るための数学的思考

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