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『L型大学』入社して1~3か月程度で習得できるような内容を大学4年間掛けてやる意味がわからない

Twitterのタイムラインで『L型大学』がいっぱい流れてきたので調べてみた。

 

MEXT(文部科学省)のサイトに上がっている「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」(PDF)が出もとらしい。著者は株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦氏。

 

オレの結論はタイトル通り。これを一般の企業も支持するようなことがあれば、さらに人材不足、労働生産性の低下を招くのではないかと危惧する。

 

L型とG型が出てくるが下記に引用しておく。

f:id:shigeo-t:20141026041758p:plain

 

日本の労働生産性が低いことは割と知られている話だと思う。

OECD調べではOECD加盟国34か国中21番目(購買力平価*1換算 GDP 労働生産性の国際比較)とか20番目(時間当たり労働生産性の国際比較)。先進7か国中最下位。ソースは労働生産性の国際比較 - 日本生産性本部(PDF)にある。

このPDFのグラフを見れば分かるのだが、1人あたりのGDP(国内総生産)が上位の国は労働生産性でも上位に来ている。数式も書いてあるので見てみよう。時間当たり労働生産性の数式は無かった。

【国民1人あたりのGDP

              国内総生産

 国民1人あたりのGDP = ────────

                人口

購買力平価(PPP)換算労働生産性

                   PPPで評価されたGDP

 購買力平価(PPP)換算労働生産性 = ────────────────

                      就業者数 

GDPはご存知の通りUS、中国についで3番目の日本。それなのに【国民1人あたりのGDP】は労働生産性の国際比較 - 日本生産性本部によれば18番目。

簡単に言えば製造業など就業者数が多い産業でGDPを稼ぎ出す産業構造の日本は、国民1人あたりのGDPは低くならざるを得ないという図式。就業者数が少ない金融などで稼ぐ、ルクセンブルクのような小国にはかなわないということになる。

この【国民1人あたりのGDP】を元に労働生産性を計算していくので、低位であることはある程度は仕方がない。

 

という前提をもって、我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」によって提唱されているL型大学について見てみよう。

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金融セクタなどの就業者数が少なくGDPを稼ぎ出せる産業へのシフトという話であれば、上に書いたように購買力平価(PPP)換算労働生産性は向上するだろう。分母となる就業者数が減るので、元々大きいGDP(分子)を割った数字も大きくなる。その代り就業できない人=失業者も増えるかもしれないけど。労働生産性の国際順位を上げるという目的なら、少人数で稼げる産業へのシフトであろう。

また「生産労働人口が減少し、労働力不足が深刻化」という認識であれば、少人数で稼げる世の中にするほうが合理的。「生産性向上・労働参加率の向上が課題」は、労働生産性の国際順位を上げるという目的に対して割り算の分母を増やす話であり、数値目標の達成から遠ざかる。

 

一方、提言では(L型)大学で実務を教えろ、職業訓練校化しろというもの。失業者を増やす提言をMEXTや政府に提言しにくいだろうし、確かに個々の企業での教育は効率面では良くないだろう。特に中小企業ということであれば、教えるための要員を確保しにくいので、OJTどころかほぼ独学ということもありうる。

 

しかしである。死語で言えば駄菓子菓子。

例示が悪いだけかもしれないので、例示されているものを見て駄目出しをするのも無粋だが、就業して1~3か月程度で身に付けたりできるものを大学の4年間を掛けてやる意味はないのではないか。もちろん1つだけでなく複数身に付けさせるのであれば、そこそこの期間は必要であるが。

 

企業側も、この提言を見て賛同するようだとかなり近視眼的である。即戦力に近い形で新卒採用できるかもしれないが、そこからの伸びしろは期待できない。

 

ビスマルク初代ドイツ帝国宰相の言葉、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」から言えば、ここから書く話はオレの経験によるもの。あえて愚者であることを宣言して書く。

 

オレオレ統計だけど、IT系の場合は机の上に並んでいる技術書で、できる奴かできない奴かの見分けが付く。How-toものの技術書が並んでいる奴は仕事ができない。これはかなり確度が高い。

オレは、一緒に働く他部署の人と話がある時は自席には呼ばず、こちらから出向くことにしていた。そうすると、そこの部署の要員の机の上も見れるんで。会話するまでも無くかなり正確にレベルを把握できる。

 

Howなんて今なら検索すればすぐにヒットする。より詳しく・丁寧にということならやはり書籍ということにはなるけど。なんでHow-to本ばかり買うエンジニアが使えない奴かというと、基本を把握することが無いから。少し違う事をやらせようとするだけで、すぐに行き詰まりやがる。基本・基礎を把握していないので、ちょっと違うだけで頭から勉強が必要。Howの。結局、何かを把握することに対して高コストになる。

 

基本を把握していてこその応用。木を見て森を見ずどころか、枝葉を見て森を見ずという奴がこのHow-to本しか持たない技術者。How-to本ではなく基本を把握できる理論本とかリファレンス本を持っている奴は総じて、少し違う事をやらせてもすぐに対応できる。やはり基本を把握しているからだろうな。

 

自分のことを振り返っても同じことが言える。時間が無いときにはHow-toを探して即対応で終わらせるが、あとで振り返って基本や基礎を把握する。そういうクセが付いたのは、やはり大学で毎週毎週実験レポートを提出させられたからではないかと思っている。実験の内容そのものは就業してから役に立ったことはほとんど無い。しかし、モノの見方、考え方、それのまとめ方という意味では、毎週の実験レポート提出は役に立ったと思っている。理屈が分からないとレポートが書けない。工学部出身なので理屈は後回しではあるけど、理屈を理解しないままということはありえない。

 

オレの場合、技術書はオライリーものとかを買って、内容を把握したら後輩や部下の人にあげちゃう。そういう本を使ってほしいという意図もある。 

sed & awkプログラミング 改訂版 (A nutshell handbook)

sed & awkプログラミング 改訂版 (A nutshell handbook)

 
Apacheハンドブック

Apacheハンドブック

 

 

アプリの使い方なんてバージョンが変われば操作性も変わってくるし、機能も追加されるか置き換えられる。そんなもの大学で「習う」程のものじゃない。もっと短期間の職業訓練で十分である。

 

企業もこの提言に乗って政府の推進のもと、このL型大学が増えたとしよう。そこから採用する人材は、確かにその企業で必要なことを学んできているかもしれない。しかし、基本を把握するという動作を学んできていない。即戦力ではあるだろう。しかし、なぜそういうやり方なのかとか、どうあるべきなのかというように考えることを身に付けていない。

上に挙げた例のように、How-toだけではワーカーとしてもどこかで行き詰る。

 

新卒で採用してから数年~数十年という就業期間を考えれば、日々の業務を粛々と遂行する能力と共に、「この業務は」「自社は」どうあるべきなのかを考え、進化させる能力も必要である。そういう人材はG型大学でしか作らないということになると、G型の大学や産業からドロップアウトした人間以外は、まともに企業を発展させることができない。

 

即戦力ということで就業直後の数か月分を得したとして、そのあとの数年~数十年という就業期間は成長が無い要員は欲しいだろうか?オレが企業側だとすると、それは困る。

 

そもそもの話をすれば、技術というのは再現できるから技術なのであって、再現できなければ技術ではなくまぐれである。例えばイチローはメジャーのピッチャーからヒットを打てるが、何本かなら甲子園出場の主力クラスの打者も打てるかもしれない。だが同じ打数で同じ(あるいは超える)アベレージは無理だろう。そこが技術の有無、技術の差である。

 

企業内で必要なHow-toだけを知っている人間は、そのHow-toの部分=手順に則る部分は技術があることにはなる。しかし、少しずれただけで対応できないのだとすれば、その分野に対する技術は持っていないということになる。提言の例示で言えば、経理の要員を雇ったつもりなのに弥生会計のオペレータだったというミスマッチ。会社の規模が大きくなって弥生会計からOBICとかSAPとかに乗り換えるということになったら、その要員は使い物にならない。というか抵抗勢力化しかねない。

 

大卒のホワイトカラーなのに単に「○○ができます」という作業者ばかりでは、企業としての成長が難しい。それともL型大学出身者は給与水準を高卒並に落とすのか?それだと大学進学分の投資を回収できないので高卒で就職する方がいいし、日本の労働生産性が向上に結び付く話には思えない。

 

大学のランクによらず、モノの見方、考え方は身に付けさせる必要があるのではないか。ランクが低位な大学が、大学(学校法人)の生き残り策として職業訓練校化することには反対しない。それで就職率が向上・維持できるのであれば、それはそれでありである。

また、下位の大学は専門学校、専修学校にしろというストレートな話ならそれはそれで理解する。だったら「新たな高等教育機関」などとぼかさず、ストレートに書けばいいのだが。

 

しかし、政府・MEXTからのトップダウンで提言通りの世界にすることには反対である。またこの提言は、必ずしも提言の目的である「日本の労働生産性向上」に寄与しないと考える。

 

あと、この提言には細々とネタが仕込まれているんで、いくつか突っ込んで終わりとする。

筆者は日本のトップ戦略コンサルタントの一人だが、ポーターの5Forcesは使ったことが無い

でしょうね。5Forcesは後から結果を分析するためには有用だけど、オンタイムでは全部がなかなか埋まらない。全部埋めるために労力注ぐくらいなら、やるべきことはいっぱいある。

筆者が卒業したスタンフォードビジネススクールのMBAプログラムでさえ、その本質は高級職業訓練校(言わば高級簿記学校)に過ぎない!

驚く内容が掛かれていないので、エクスクラメーションマークの意味はわかんないんですけど。

MBAは日本語では経営管理修士(専門職)であり、「(専門職)」と付くのを見ても分かるようにひとつの職業訓練。いや、スタンフォードに行かないと分からないほど難しい話ではない。MBAコース受験する前に把握する内容。「行ってからわかったんかい」という突っ込み待ちなら、エクスクラメーションマークの意味はあるかも。

 

ということで、さくっと書こうと思ったら4,500文字大きく超えた。

*1:購買力平価とは、物価水準などを考慮した各国通貨の実質的な購買力を交換レ-トで表したものである。