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なぜERPが金食い虫になるのか

円高じゃないか。責任者出てこい(挨拶)。直接為替が影響する生活ではないんだけど。

 

日経ITProがここのところキている。別に褒めてない。課題の提起はいいけど底が浅いなと。

ITpro編集長日記 - 衝撃的なオリンパス社長の自社ERP批判:ITpro

経営の立て直しは順調、金食い虫のERPが課題に---笹 宏行 氏 オリンパス 代表取締役 社長執行役員:ITpro

 木村岳史の極言暴論! - SIガラパゴスの負の遺産、いつまでブラック企業の世話になるのか:ITpro

 

事はオリンパスに限ったことではない。テーマは(1)ERPが金食い虫になるわけ(2)日本のIT業界がブラック化するわけの2つだが根は同じ。ブクマには「後で書く」って書いたけど、気付いたらほとんどは今まで書いてた。

地方にITエンジニアは必要か?(長くなったのでその1)

地方にITエンジニアは必要か?(その2)

地方にITエンジニアは必要か?(その3) 

地方にITエンジニアは必要か?(その4) 

日本企業がソフトウェアパッケージをあまり使わない問題について自分の知りうる範囲で書く

記者の眼 - 「SIガラパゴス」を育んだIT部門の罪:ITproについて

 

まずテーマの1つ目。題名にも書いた通り、「なぜERPが金食い虫になるのか」。記者の眼 - 「SIガラパゴス」を育んだIT部門の罪:ITproについてにも書いた通り、大きくは2つの問題がある。

  1. 経営者がIT戦略についてコミットしていない
  2. IT部門が現場の伝書鳩しかできない

まずオリンパスの例でもそうだが、そもそものERP導入はかつての自社構築(と言ってもSIerに作らせた)会計システムを改訂することでコストダウン、情報の一元化、経営情報取得の短期化などであろう。ERPそのものは金を稼いではくれないので、できる限りコストを下げたい。

しかし、IT部門ERPを適用する各現場の業務を知らない。知らない上に、知るための時間・要員的なリソースは与えられていない。

ここで問題なのは、経営者がIT戦略についてコミットしていないこと。そもそも上場クラスの大企業でもIT戦略そのものが無いという場合もある。経営者全員が戦術レベルまで把握する必要はないわけだが、経営とITという現代では切り離せない2つを別々に考えている点は問題である。国内・外の各業界のトップ企業を見ればわかるはずなのだが、経営がやりたいことを実現するためには、ITを利用するほうが効率的だったり効果的だったりする局面がある。それを踏まえると経営課題に対してITをどう適用するかは経営のタスク。言い換えると、経営課題を達成するためには「ITはこうあるべき」という定義を経営側で行い、定義されたあるべき姿に対してITの技術的な、あるいはコスト的な課題を解決するのがIT部門という関係になるべき。上辺を見て「よそはERPを入れて効果を出しているらしい、ウチでもやるぞ」では経営ではないし、IT戦略でもない。経営課題を解決するためには、一時的に多くのリソースを割くことは、他のビジネス部門に対しては実施しているはず。であれば、IT部門にも一時的に多くのリソースを割けばいい。そうすることで、現場の「ウチは特殊」という声が誤りであることも分かるし、経営側が「ERPに組み込まれている業務は多くの企業のベストプラクティス。ウチの会社がそこから大きく逸脱しているはずはない。業務をERPに合わせろ」と言えば末端まで抵抗を抑えることができる。

単に他社がERPでうまく行ったという事例をみて、「よそはERPを入れて効果を出しているらしい、ウチでもやるぞ」と非力なIT部門に投げた結果が、オリンパスのような例になる。ベンダ/SIerはさぞ儲かったことだろう。

 

カスタマイズ要件が積み上がったあとの高コスト体質は、書かなくてもわかると思うが一応書いておく。

ERPパッケージは、導入時点のバージョンで固定されることはない。日本企業はバージョン固定大好きで、それが今話題の「Windows XPが残ってる」問題にもつながる。ERPの場合、操作性の向上のためのバージョンアップというのもあるが、多くの場合制度改定で否応なしにバージョンアップの機会がやってくる。例えば直近では消費税UP。税率そのものは国内だけで変わるわけではないので、当然可変で持てるようになってはいるが、内税方式だの外税方式だの関連法規が変わるだのとか出てくると、ERPベンダ側は見直しを掛けて対応バージョンを出してくる。カスタマイズしていると、ERP側のバージョンが変わる度にカスタマイズしたところの影響調査と影響がある場合の改訂作業が入る。カスタマイズ要件が積み上がった時点で負けが決まったようなものである。素直に感想を言えば、「経営者はよくOK出すなあ」である。導入前のカスタマイズ作業だけで相当のコストと期間を取るわけで、素人から見たって問題じゃないか。伝書鳩に聞くんじゃなくて、「ウチは特殊」「ERPの通りだと業務が廻らない」と言っている本人に聞き直せばいいじゃないか。

 

続いてテーマの2つめ。 日本のIT業界がブラック化するわけ。マルハニチロの事件にも通じるところがあるが、日本の法制度では労働流動性が低くなる。一概に労働流動性が高いことが良いというわけではないが、現状は労働流動性の低さの悪い点が出ている。

慣習から見ても、現行法からということではなく安定した社会だった江戸時代も多分そうだが、日本の場合は労働者が首になるということは「本人に何か問題があるのではないか」と思う人間が多い社会ではないだろうか。だから、企業側は制度上正しい首切りもやりにくい。ギリギリまで頑張って全員給料遅配とか倒産とか、合理的に考えればバカみたいだが、部門縮小や業績悪化によるレイオフなんてほとんど聞いたことが無い。

その結果、最初から首を切らなくてもいい形態で労働力を得るという発想になる。それが行き過ぎると、偽装請負や多重派遣などという違法あるいはグレーの労働契約が常態化する。レイオフしますとか発表すると、上場企業の場合は株価下がるし、非上場企業も資金調達が難しくなる可能性があるが、違法あるいはグレーの労働契約であっても表ざたにならなければファイナンス上は問題ない。

つまり、IT業界だけの問題では無い。日経ITProだから「IT業界は~」みたいに書きたいのだろうが、他の業種でも労働集約型の産業では同様の課題がある。

 

逆にIT業界を労働集約型じゃなくせばいいじゃないかと思うだろうが、そのためには各ユーザ企業がIT部門を充実させ、テーマの1つめのような伝書鳩型IT部門からの脱却を目指す必要がある。各ユーザ企業がそういう判断をするためには、当然企業の内情に合わせてIT部門を伸縮できるように労働流動性を担保する必要がある。今のところはデッドロックと言っていい。

 

また、 木村岳史の極言暴論! - SIガラパゴスの負の遺産、いつまでブラック企業の世話になるのか:ITpro ブコメにも書いたが、ユーザ企業もSIerも多重請負であることを望んでいるわけではない。リーガルリスク的に問題あるし。いずれも自社、発注先においても自社要員だけでは足りないだけ。いわゆるブラック企業の世話になりたいわけではなくて、要員を集めていったらそういう企業も要員の供給元だったというわけ。臭いものは元から絶たなきゃダメと昔のエロい人が言っていたので、SIerに責を求めるよりはユーザ企業側に求めるべきだろう。

ここで、もう少し引いて考えてみる。業界全体で求められる労働力が平準化できないのは、別にIT業界だけではない。例えば現在は自動車業界は活況だが、自動車業界が誕生して以来平準化できたこともなければ、ずっと右肩上がりだったわけではない。

(前略)しかも、これから2年間はマイナンバー制度のためのシステムなど大規模開発が集中し、IT業界では「2015年問題」として技術者不足が騒がれ始めている。

 このためIT業界全体では再び技術者の数が膨らむのは間違いない。ただし、クラウド活用が当たり前になりつつある昨今、特殊要因の大規模開発案件が一通り片付けば、システム開発量は激減するだろう。その時は再び、大手SIerの預かり知らぬところで、多くの技術者が失意の中、IT業界を去ることになる。

 そんなわけだから、大手SIerはいつまでも、この問題を他人事として放置してはいけない。(後略)

 失意の中かどうかは知らないけど、他業界でも充実した労働環境を得ることができればいいじゃん。人生、何が役に立つかわからないんだし。それこそSIer側ではなくてユーザ企業側に入ることでもITの知識は役立つ。労働ということで考えると、社会全体で考える問題であって、ごく一部だけにフォーカスした単純な対立軸みたいなことではないんだがな。